1-A3
コイツは一体何を言っている…
「そもそも自分にあなた方を拐えると思ってるんですか、どう見たって無理でしょ」
「いや、ンなこと言われたってなぁ…」
「むしろ拐って自分に何の得があるって言うんですか」
確かにイケメンにイケボで色々保養になるかもしんないけど死ぬくらいならそんな保養要らんし!
発言の内にも所々意味のわからん単語を入れている。南蛮語か…?
そうか南蛮語か…
それならばそこここにある目にしたことのないものが南蛮の物、ということで説明がつく。
ならばここは南蛮か?それともコイツはそういう商人の者か何かか?
どうでもいい。もうなんでもいい。
長曾我部、早く話を済ませろ。そしてとっとと私を大阪城まで送れ。
「だから別に捕らえるつもりないって。なんなら今すぐ帰ってくださいよ、そのほうが助かるわ、こっちは」
しばらく長曾我部と何かしら話していたはそう叫ぶように言うと立ち上がり、まっすぐ歩いた。
何をするのかと刀を向けようとするが長曾我部に鬱陶しい視線を送られたのでしないでおく。
誰が貴様の制止の声など聞くものか。もう聞きたくない。
ガチャ…と、火縄銃の球詰めの歳に聴こえる装着音より少し重い音がした。
直後奴は目の前の壁を押す。と、光が差し込んできた。
「さぁ!」
…なんだ、これは…。
ガチャン、
先程まで飛び込んできていた景色が、光ともども壁に遮られる。
ああ、この目の前の壁はただの壁ではなく外へ繋がる出口なのか…
長曾我部が、奴が開けた出口を閉ざす。
…何をしている。
いや、しかし長曾我部がしなければ私がしていたかもしれん…
「…なんだ……あれは…」
とてもじゃないが、理解できないものが広がっていたような…気が、する…。
長曾我部の目が輝いているように見えるのは、気のせいだろう…
奴が困惑した様子で長曾我部に何か説明をしている。
なんだ、知られては困ることでも聞かれているのか…
そんなことを思ってみるも奴らの話に耳を傾ける気にはならん…
「…お、」
「…起きたか。」
「は?え?なんですか?」
微かに気配が動いたのを感じた。
それが、私たちが先ほどまでいた場所だということは他の者も目を覚ましたのだろう。
ああ、そうだ。刑部を置いてきている…早く戻らねば…
そうと決まればこれ以上ここに居る意味もない。
この女の話はわけがわからない。聞く気もない。せいぜい長宗我部と戯れることだな。
「え、どういう…」
「いや、実はよ…俺と石田の他にも4人、野郎がいんだよ…」
「………嘘でしょ…」
「本当だ」
だからだから話はそいつらを交えてしようぜ。面倒だろう?
そういう長曾我部と、奴の溜め息が静かなこの空間でやけに大きく聞こえた。
遭逢
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