1-A2
目の前に居た奴が倒れた。
思わず駆け寄ると石田から制止の声がかかる。
「放っておけ。死んで当然だ」
「馬鹿言うなよ石田。コイツがやったって決まったわけじゃねぇだろう?」
「だがここにはそいつしかそれらしい気配がない!!!」
それもそうだ。
目が覚めれば周りには馴染みのある奴ら…真田とその忍、毛利に加え、死んだって聞いた石谷、大谷までいやがる。
どういうことか理解しないでいると石田が目を覚め混乱しだした。
よく見りゃあ周りには見たこともないもので溢れていて、ますますわけがわからなくなった。
石田が暴れねぇように宥めてるとすぐ近くから気配が動いたのを感じた。
なにかゾッとするようなものを帯びてるわけじゃねぇが、馴染みがねぇ。
これはそいつの仕業か、どう聞き出そうかと考えてると石田が刀を持ってそれに向かっていったので後を追った。
「だがよぉ、こいつを殺しちまっちゃあ何も聞き出せなくなるじゃねぇかよ」
「……知るか」
特に意味があるわけじゃねぇが、なんとなく腰に巻いていた桃色の布。
まさかこいつに感謝する日がくるたァな…
なんだかんだ言って結構気に入っていたんだが、それを千切って包帯替わりにする。
応急処置を済まし、血が止まったのを見て安堵する。
それを石田に理解できない、とでも言いたそうな顔で見下ろされる。
コイツが起きたら話を聞こう。
意識がない今、下手に何かをすることはできねぇ。かと言って俺たちが居た部屋まで連れて行って、目が覚めて動揺してるアイツらの誰かに止めを刺されちゃあ俺のここでの働きが無駄になっちまう。
「早く起きてくれよ」
返事が返ってこないとわかってても、ついそうこぼしてしまった。
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