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「いいいぃいいいいたいいたいいたい、ちょ、本当に痛い!!!!」
「嫌なら答えな」
渋ってると首元の布団叩きが食い込んできた。取っ手の方が宛てがわれてるからタチ悪い…痛い
ていうかそれがあるからなんか焦るしうまく喋れねないんだよ!!!しかも痛い!!!
もがけば拘束される。
布団叩きを持ってない方の腕を後ろから首に回され動けないよう力を込められる。
後ろからギュってされてみたいって願ったこともあったけどまさかこんな形で叶うとは!ちっとも嬉しくない!
「斯様に首元に突きつけては吐き出すものもできなくなるであろう」
「あ、それもそっか」
もうひとりいたのか!こっちは絶対イケメンだ!ありがとう!!
腕を緩められ、布団叩きを肌に触れない位置まで離してもらった。ああ…まともに息ができる…素晴らしき世界。
「嘘を申せば容赦なく叩き切る」
後ろから、目前へと回り込んできたのは緑。手にはただの金属ワイヤーへとなり果てたハンガー…先端が尖ってる…これ喉に当たったら死ぬ…なんかもっとタチ悪いよ…
ああ、イケメンだと思ったのにな…どっちかって言うと美人だ。目が怖い。
美人は怒らせると超怖いって言うけどこの人今怒ってんのか…むしろ微笑んだ図を思い浮かべられないのはなんでだ…
「…貴様、何故我を斯様な所へ拐った」
「拐ってないし」
「口の利き方に気を付けよ」
「痛い!!!!!」
突き刺さったぞ!!!!!!!!!!こいつッ、
思わず身を引いたけどそういや後ろにもう一人自分の自由を奪っている奴が居たんだった…
痛いよ…痛い、まだ布団叩きのが触れてる面が多いからまだマシ…ずっとマシ…
「拐ってませんし!あなた方がどうやってここに入ってきたのかこっちが聞きたいですし!どなたかも存じ上げてないですし!!」
「言っとくけど、嘘ついても無駄だよ。素直に吐いた方が楽なんじゃない?」
「嘘じゃないって、ぐ…ッ」
口の利き方に気をつけろってか!?わかったよ!わかったから突き刺すなハンガー!!
そもそも自分にはこの人たちさらっても何のメリットもない…。現に攻撃、威嚇されてるだけだし。そんなんされたいようないい趣味持ち合わせてないし。
むしろ知りもしない人拐ってどーする。しかも大の大人を二人、しかも男。明らかに力負けすんじゃん。どうやって拐おうってんだよ、興味もないよ。
ていうか、帰っていただけるならそうしてもらいたいわ。
その旨を告げる。
嘘をついていないというのにどうしても嘘にしたいらしい。まったく、ホントいい迷惑だわ。こっちはシャワーしたいんだっつの。
「ふむ…しかし見たことのないものばかりぞ」
「だからなんだっていうんですか」
この脱衣所にそんなモン持ち込んだ記憶はない。
つか今思えばこの人たちの格好奇妙だよね。なんて服してんの。
後ろの奴はまだよく分かんないけど変な手袋みたいなアームみたいなのしてたし、目の前の美人さんはなんか…チャイナ服みたいな上に袴か?そんなんをブーツイン…なんだろ、変な組み合わせって普通はなるとこなのに無駄に似合ってる。そんで帽子でかいよ…
なんでそれで頭のバランス取れてんのさ…自分だったら後ろにガクってなってる…
「貴様は馬鹿か。もしここが異国の地であったのなら出たところでより危険な目に遭うやもしれぬということ。今は…武器も見当たらぬ故…な。」
「あ、それ俺様も不思議だったんだよね〜。暗器もひとっつもない」
「え、武器?暗器?」
何やら聞きなれないワードが二人の間で飛び交う。
何事ですか。
「てことでいろいろ説明よろしくね〜」
「説明とやらをするのであれば先ほどの部屋に戻るのがよかろう。同じ説明を何度もするのは馬鹿のすることよ」
「面倒だしね〜」
てことでよろしく!
そう言って首に回されてた腕を外され、ぽんと肩を叩かれる。
振り向けばこれまた個性的なイケメン。顔の周りにあるその額縁はなんだ。なんだポンチョ。なんだ顔のペイント。あれか、お正月イベントの狂い咲きみたいな。
早く、と背中を押される。が、正直に言おう。
自分のが説明して欲しい。
遭逢
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