紫 | ナノ
1-C1


なんか気持ち悪い気がするしねー。


ほら、だらけてるとよくあること。気持ち悪くなってくるからそういう時は水浴びてシャキッとするに限る。心身ともにリフレッシュ。したら俄然やる気出る。

いやこれといってやる事はないんけど。



お風呂は好きだけどシャワー派になった。あれだ、ここの家主の影響。
バスタブがないわけじゃないけど…


お風呂は湯だから目に見えない汚れとかも取れる。それで体から取れた汚れとかが浮いてるそれに浸かってると身を清めてんだか汚してんだかわかんなくなる、らしい。


そんなこと言われれば…ね。ていうかそんなこと言わんといてよ!!危うく風呂には入れなくなるところだったでしょーが。

そいつが言うにはそれと比べるとシャワーの水は使い捨てだから汚れた水が自分の体に触れることがなくていいらしい。
それも一理あると思ってしまった自分は今やほとんどシャワーだけの生活になってしまった。



無駄に広い風呂場の無駄に広い脱衣所に着く。
さぁ脱ごうという時に風呂場からもの音がし、思わず固まる。





「…幽霊…」





冗談だろ、と顔を引きつらせながらも恐る恐る風呂場への扉に手をかけ、

開ける。





「…ハハ、だよね」





誰もいないことに人知れず安堵した。
こんな全体的に無駄に広い家に幽霊なんか出てみろ。ただでさえ広さが不安を煽ってんのに自分はもう一歩たりともその場から動けなくなる。恐怖で。


いや待てよ、幽霊がいたからこそ物音がしたのに誰もいないの?本当に冗談やめてよー…いや本当に。


……ハッ、そうか。疲れてるのか自分。とっととシャワってスッキリしよう。そしたらきっとこんなバカなことも考えなくなる。


そうしようそうしようと身にしていたジャージの上を脱ぎ捨て籠へと放り投げる。





「動かないでね」

「ッ、幽霊!!!」

「いや違うから!!!」





先程まで確かに誰もいなかった後ろから人の声。まだ若い。

いやいや勝手に想像図を作っちゃダメだ。
振り向いたらおじさんとかよくあること。絶望しないようにするためにも落ち着いて想像を断ち切ろうぜ。





「アンタ、誰」





首元に布団叩きを宛てがわれる。痛い。ていうかなんて武器…

横目でそれを持ってる手を見れば刺々しい…というか黒い硬そうなものに包まれてる。とても実態がないようには見えない、ということは幽霊じゃないのか。


なんか、助かったのに助かってない。え、なにこれ超複雑。


誰だよ、なんでここにいんだよ。何用だよ、つかどうやって入った。
強盗って、なんか違う。いや確かにこの家ならなんか盗るものありそうだけどさ。だとしたら武器が布団叩きって準備悪すぎじゃない?明らかそこら辺にあったのを取ったって感じじゃん。





「ねぇ、早く答えてくんない?イライラしてきたんだけど」





えー、なんかすげぇ理不尽なこと言われたし。











 →「あー…、っとその、」


 →「逆にこっちが聞きたい…」





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