短編 | ナノ







「………………………………ない」
「え?何がぁ?」
「ごめんっ今日はありがとう!また機会があったらよろしくじゃっ!」


手早く別れの挨拶を済ませ回れ右をして全速力で来た道を戻る。

やばい、やばいやばいヤバイヤバイッッ!!!!
ちょ、ぎょぉおおおおおぉぉおおおおぶうぅぅうううう!!!!!!!!
おかしいと思ったんだ!初めて対面する相手だろうと遠慮なしに人をおちょくる刑部がなんか妙に静かだから!!!まさか右ポケットからなくなってたとか、そんな、いつの間にか落としちゃってたとか思わなかったよ!!!!

自分の責を刑部のせいにしながら来た道の足元に注意深く目をやっているとぽつり、ぽつりとあちらこちら不規則に出来る濃い斑点。それらはアスファルトの匂いを強くし、すぐに雨が降ってきたのだとわかった。

まずいッ、これはマジでまずい…ッ!!

無意識に握りしめた両手の爪が食い込んだ痛みで、なんとか自分を落ち着かせた。








身動きが取れぬとはなんとまぁ…不便よなぁ…


「刑部…っ!!!!」


着物を濡らす水のせいか、はたまたわれのこの脆弱な体が雨に犯されていったからか、どことなく重くだるく感じる身体にはて、どうしたものかと跳ねる雨から視線を上げた時であった。


「っぐ、」
「見つけた、見つけた…っ、やっと、やっと見つけた…ッ、刑部…っ!!」


前方から名前が現れ、(それはまるで大砲のように)われに抱きついてきやった。


「刑部っ、ぎょ、ご、め…ぎょぶっ、」
「…随分とわれを待たせたなァ…名前よ」
「ごめん、ほんと、ごめ、ぎょぅぶ」
「ヒ…、なんぞ名前、傘も差さずに来おって」
「ごめんな、刑部濡れちゃって、ごめんな」
「これ名前…」


名前はまるでわれの言葉など聞く余裕もないようで、先までわれに抱きついておったかと思えば今度はわれが濡れぬように頭を抱き抱えられる。うわ言のように謝罪の言葉を繰り返し、しばしすれば今度はわれの返事など聞く様子もなく次から次へと体調を気遣うことを訊いてきやる。
…埒があかぬ…


「ぬしのせいよ」
「っ、……ぎょ、ぶ…」
「われを落としても気づかぬほど愉しい時間を過ごしたようなァ…われがこのような目に遇うておるというに」
「ご、め……ぁ、ぎょぅ」
「われと同じように雨に濡れれば許されると?息をきらして来れば頑張ったと誉められると?」
「そんなことッ、」
「文句反論があれば云うてみよ、われは間違ったことを云うておるか?」
「ぎ……っ、…」




…………………………ちと、やりすぎたか?

と、思うたときには手遅れであった。








携帯依存症

(名前や、名前、(…よもや泣くとは…))
(ぅ"あぁああぁ…っ、ひっく、ぅ、ご、めんなさ)
(泣くでない、ぬしがいつまでも泣いておるから空も泣き止まぬ、ヤマヌ)
(ぎょ、ぶ怒…らな、ぃ…)
(怒らぬ怒らぬ(なでなでなでなでなでなで))
(ぅ、…お、怒ってたぁああぁ…)
((困った…ヤレ困った))




その後(会話文のみ)




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