Hi,there babe.


「おう、レノックス。娘か?」

「あぁ、娘だ。アナベル、あいさつは?」

オートボット達に会わせてやろうと、格納庫に連れてきた娘に、気が付いて声をかけてきたのはヒューマンモードのジャズ。
娘にあいさつを促すと、ジャズが握手の為に右手を差し出す。賢い娘は小さな手でしっかりと彼の手を握った。
自分の腕に抱かれた娘に、ジャズがいつもやる笑みを浮かべる。彼の形のいい唇の左角がクッと上がって、綺麗に揃った白い歯が覗いた。

………相変わらず、いい男だと思う。

「オネィチャン、歳はいくつ?」

「2才」

少し恥ずかしがっているが、ヒマワリような明るい笑顔でピースをする娘は本当に可愛い。

「レノックス、抱っこしてもいいか?」

「落とすなよ?」

本当は誰にも抱かせなんざさせたくないが、どうせいつものように、他の人に抱かれるのを嫌がってくれるだろうとアナベルをジャズの前に抱き上げてみせる。

ほーら、俺の方に戻ろうと……

「アナベルは、羽根みたいに軽いな!」

嘘だ!!信じられない!!!!

むしろ自ら娘は両手を広げて、ジャズに飛び込んでいった。高い高いをしてもらっているアナベルはとても嬉しそうに笑い声をあげている。

「アナベル、車は好きか?」

「好きー!」

確かに娘は車が好きだ。バービー人形より車のオモチャを欲しがる。

…………さすがにトランスフォームされたら泣いて嫌いになるだろう。
怖がって………泣いてくれ!

ジャズがアナベルを高くほうりなげると、彼の体は青く発光して機械が組み換えられていく姿が表れる。
少しハラハラしつつ、怖がって欲しいという淡い期待を持ちながら、その光景を見守る。
アナベルが下に落ちた時にちょうど運転席の上に受け止められて、ジャズがポンティアック・ソルスティスにトランスフォームし終えた時にアナベルは車内だった。

「ほら、泣くぞ?すぐ、泣くぞ?」

どうするつもりだとジャズを攻めてやろうと、運転席のアナベルを覗きこんだ。が、俺の期待に反してそこにはキラキラと顔を輝かせながらハンドルを握って立つMYエンジェルがいた。
こんなに嬉しそうなアナベルを見たのは初めてだ。

「アナベル、どうだ?」

「すごーい!楽しい!」

…………なんだろう。

娘が目映いばかりの笑顔を見せているのに、すごく悲しい。
いつかアナベルがジャズの元へ行ってしまうような気がする。

もう、こんなことを考えるはめになるなんて。

「ねぇねぇ!もっとできるー?」

「よし、見とけよ??」

ジャズが再びトランスフォームを始める。
今度はバトルモードにボディが組み変えられていく。バスケットボール選手がウォーミングアップで己の体の上でボールを転がしていくように、アナベルは姿を変えているジャズのボディの上を転がる。トランスフォームが完了したときにアナベルはジャズの手の上に座っていた。得意気に口の片端をクッと上げて、バイザーをカシャッと下ろしてみせたジャズに歓声を上げるアナベル。

………それ以上娘が喜ぶことをしないで欲しい。
俺のところに戻って来なくなる。
いや、いつかは自分の元を娘は離れていくのは避けられない。

父親として複雑な思いを巡らせながら、ジャズのバイザーをカシャカシャと収納したり出したりしている娘を、ジャズの足下から眺めていた……………

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