『…うーわ』



帰り支度を済ませ、下足の前まで来た所で軽く絶望した



…ものっそい大雨だ
まさにバケツをひっくり返したみたいだ…

さっきまでは、そんなにだったのに…

此処に来て、傘を持っていても歩いて帰れるには一苦労所じゃ済まなそうな勢いになっている



…と言うか、まず私今日傘無いし


いつも折り畳み持ってるから油断してた

その傘で一昨日帰って、家に置いて来たままなの忘れてた



『最悪…』



この雨の中歩いて帰れる距離でも無いし、まず濡れるなんてゴメンだ

これは雨が止むまで待ってるしか無いな…










ザーザーと雨の降っている音で目が覚めた


「…?」



欠伸をして外を見ると見事にどしゃ降りで、帰る気が一気に失せる


時計の針は丁度17時を指していた




『あれ?沖田だ』


誰かと思ったら、少し驚いた顔をした苗字が立っていた



「…おー」


『おーって…まさか今起きたの?』


「…今じゃ無ェ、さっきでさァ」


『一緒だし』




驚いた様な呆れた様な顔で俺の前に座る



「飴」


『?』


「眠気覚ましに飴…持ってんだろ?」




授業中に寝るのは良くある事だが、流石にこんな時間まで寝たのは初めてだった


…つーか誰か起こせよ




『本当に良く寝るよね、寝る子は育つと良いね』


「…これから成長予定なんでィ」


『ふぁいとー』




プププと笑っいながら飴を手渡す苗字

…てかその顔がウゼェ…自分だってチビでぺったんこのクセに…





「…てか、お前なんで居んでィ」


『委員会…で、傘忘れたから止むまで暇だから教室に居ようと思って』


「折り畳みは?」


『それも忘れた』


「バカだねィ」


『うっさい』



口の中で飴を転がしながら適当に聞き流す

そんな俺を見ながら、ふと思い出した様に言った



『沖田ってさ、本当に普段やる気ないよね』


「なんでィいきなり」


『いや、…だって良く寝てるし、普段ダルそう…てか興味なさげだし、体育の時とか滅多にちゃんとしないじゃん?』



あ、土方君と居るときは楽しそうにしてるか…と、のんびり言う



「つーか、お前も授業中寝るのは常習犯だろ」




『…なのにモテるとかムカつく』


「?」




俺の言葉をシカトして言った



『今日の昼休み告られてたでしょ?』




苗字の言葉に一瞬ナゼかドキリとする


確かにそんな事もあったと思い出す
相手は知ら無ェ奴だったし、その場で直ぐに断ったが
まさか苗字が聞いていたとは思わなかった



「盗み聞きとはいただけ無ェや」


『偶然通っただけですぅ』



ふてぶてしい態度で言った



…てか、



「お前良く俺のこと見てんだねィ」



昼休みは偶々だったとしても、体育とか男女別の時もあるのに、何でこんな知ってんだ


席だって、特別近い訳じゃ無い



『…ぐ、偶然ですぅ、…てかそれくらい同じクラスなら誰でも知ってるし!』



「あー…確かに」




その言葉に確かにと納得する

しかもこのクラスは3年間クラス替えも無い訳だし、クラスの大半の奴の事は大体知ってても当たり前か





『…てか、それだったら沖田もじゃん』



「?」



『よく私が飴持ってんの知ってたね…あ、あと折り畳み傘も』




不思議そうに聞いてくる苗字に、その言葉を聞いて

そう言えば何でだ?と思った俺




「それは、たぶん…」



『…?』



言いかけてもう一度考える



別に特別仲が良い訳でも無いが、仲が悪い訳でも無い

喋る時は喋るし、話さない日もあるっちゃある


そんな俺が何で苗字の持ってる物を一々知っていたか…

それは…



「…偶々でさァ」


『…ふーん?』



偶々トラブル発生中


(偶々苗字の事を見てて、)

 
(偶々知っただけ)




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