『…何してんの?』


「あ、やべ」



今日は夕方からドラマの再放送があるから早く帰ろうと自転車を取りに行ったら

何故か私の自転車で帰ろうとしている総悟がいた



『自転車は?』


「…今日歩いて来た、じゃあな」



ナチュラルに私の自転車で帰ろうとする奴に、思わず鞄を投げ付けた



『待てコラァァア!?それ無かったら私帰れないじゃんか!』


「…最近太った?」



『走れってか?運動しろって事か?』



なんて事言うんだチクショウ
絶対自転車を貸してやらん

歩いて来たならそのまま歩いて帰れバカ

そんな私を見て閃いた様に言った


「…しょうが無ェなァ」



『?』







『…ハァ…ハァ………重い゛〜!!』



総悟が提案したのは2人乗り

確かに私も総悟もちゃんと帰れるけど…



『何でッ…私がッ、前なのさァァア!?』


何がしょうが無いんだコノヤロー
全然しょうが無くないじゃん!
つーかマジで歩いて帰れよ!


「まだまだでさァ、とっとと進みなせェ」


『…ちょっ!!…疲れたんだけど!』


「じゃんけんで負けたお前が悪いんでさァ」



じゃんけんで負けた方が指定された場所まで自転車を漕ぐルール

…さっきから3回連続私が負けている

次のじゃんけん場所まであと少し…
次は絶ッ対に勝ってやる!!



『…総悟!…ッやっぱり、降りて!!』


「まだ場所まで着いて無ェ」


普通の道なら頑張れるけど、1人でもキツい坂道をこのまま登り切る事は絶対に不可能だ


『じゃあ今だけで良いから!!』


「嫌でィ」


頑なに降りてくれない総悟
しかも楽しそうに言うからムカつく…このドSめ!!



『ムリ!!…総悟重いッ!』



「じゃんけんで負けたお前が悪い」


『そればっかりか!!』


「…じゃあ半分まで行ったら降りてやらァ」



それまでは絶対に降りないと言う総悟

…こうなったら半分まで全力で漕ぐしか無い
それで絶対何か奢って貰おう




『…はぁ…めっちゃ疲れたァァア!!』


「体力無さ過ぎでィ」



やっとの思いで半分まで辿り着いて、さっさと降りろと急かす


ゼェゼェと汗も掻いて疲れる私に対して、一切疲れていない総悟

早く歩けと言うからいっその事このまま置いていってやろうか…





『総悟、アイス食べたい…』


やっとの思いで付いた次のじゃんけん場所のコンビニ

さっきまで意気込んでいた私だが、今は何よりも疲れた

勝負の前に休みたい…と言うかアイス食べたい



「買えば良いじゃ無ェか」


『財布忘れた』


「……。」


私のこれまでの努力を賞して是非とも奢って欲しい

そう願いを込めて思いッッッきり総悟を見た


「…ハァ…何が欲しいんでさァ?」


参ったと言わんばかりのため息と一緒に、鞄から財布を出した


『やった!』


自分で頼んで起きながら、本当に奢ってくれる事に驚きつつも

アイスを食べれる事にテンションが上がって走って店に入った



『どれにしよっかなー!』


ルンルンでアイスコーナーを覗くと思ったよりも多くの種類があって悩む

イチゴかチョコか…レモンも好きだしな…
う〜…ん…



「まだ決まら無ェのかィ?」


抹茶のお菓子を片手に持つ総悟
…決めるの早すぎでしょ


あんまり待たせるのもアレだし…レモンにしよっかな

あ、でもやっぱいちごも…
あァもう!!キリがない!!


『この中から選んで!!』


こうなったら第3者に決めて貰おう



「…じゃあコレ」


総悟が選んだのはイチゴでもチョコでもレモンでも無い、抹茶味のアイスだった


…普通悩んでたやつの中から選んでくれるんじゃ…

レジに並びに行った奴を見ながら思った



「ん、」


『ありがとー』



早速食べようと開けた所で総悟が自転車に乗った

…しかもまだじゃんけんして無いのに前に乗って漕ぐ準備まで…



「置いてくぜィ」


早く乗れと言う姿に珍しい事もある物だと思いながら後ろに乗った



『総悟本当に抹茶好きなんだねェ』


心地良いスピードで走る自転車の後ろで開けただけのアイスを見て思った


さっき買ってたお菓子も抹茶だった
普段余り抹茶味の物を食べないから、抹茶アイスとか初めてかも…


「なんでさァ…嫌だったんですかィ?」


『そう言うんじゃ無いけど』


嫌とかじゃな無くって、ただ純粋に
美味しいのかなー?って思っただけで…


「…んでィ…俺ァその味が好きだから、名前にも教えてやろうと思ったのに…」


『!!』



少しイジケた風に総悟は言った


それが少し嬉しくて、アイスを一口パクリと食べた


キミの好きなその


(ホントだ…おいしい)


(…だろ?)


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