『ああああ葵ィィイ!!!』



朝、教室に入ったと同時に私に飛びかかって来たヘタレをヒョイと避ける

と、綺麗に壁に激突した



「……なに?」



朝からよくそのテンションでいれるなと、ある意味関心する




『………った…』


「ん?」


『沖……の、べ…と…を……った』


「は?」



モジモジしながら聞き取れない言葉を発する

はっきり喋れと目で訴える



『…お、沖田君の、お弁当を…つ、作る事に…なった。』



「……ほぉ、」



沖田君と言うとこのヘタレバカが、何でそうなるんだ!!としか言えない告白をして、
謎に連絡先だけ交換して終わったあの沖田君か




『昨日さ、電話してたら今日からお姉さんが出張でお弁当が作れないて話になって…』


「あんたが作る事になったと、」


『うん』


「へー」




てか、電話なんかしてたんだ…全然知らなかった、何だろこの感じ…

誉めたいような寂しいような…




「それで、作ってきたの?」


『うん、好きなおかずとか色々聞いて、…昨日から下拵えして頑張りました!』


お弁当の袋を出してドヤ顔を決める



「すっかり彼女ポジじゃん」


『んなッ!?』



お弁当も驚いたけど、電話してたなんて成長したなホントに…

さっきからなんだろこの親心…



『イヤイヤイヤイヤ…!?全然ソンナンジャ…テカ、アリエナイヨ!?』


「読みにくいわ」



ぶんぶんと首をフって全否定する姿を見ると、なんか沖田君が可哀想に思えてくる…


適当に買えば良いのを、ワザワザ頼んでるのに…




『ゴホン、…それで葵にお願いがあって』


「いってらっしゃい」



何を言うかは察しが付いてるから、あえて先に言ってやった



『お願いしますゥゥウ!!お弁当渡しに行くの着いて来て下さァァアい!!!』



泣きつくように言うのをオール無視
このヘタレは、甘やかさない事にしてるんだ


それに、告白したクセに今更何言ってんだと言う思いを込めて笑顔で言った



「いってらっしゃい」


『……。』



言いたい事が伝わったのか、お弁当を持ってトボトボと歩き出す


途中で振り返ったから、fight!と発音良く言って送り出した



さてさて、どんな風に帰ってくるかな…










『……葵ィ…』


「おかえりー、…どしたの?」


『…どうしよ』


「?」



困った様な……めっちゃ助けを求める顔で私を見る



「…お弁当渡せなかった?」


『いや、珍しく素晴らしいくらいにスムーズに渡せた…私スゴくね?』



相変わらずハードルの低さ…と一瞬思ったけど、頑張ってる姿を知ってるから拍手を送ってあげよう……心の中で、




「良かったじゃん…んで、どうしたの?」


『それが…困った事になってしまって……』


「…?」





『今日、お昼を一緒に食べる事になってしまった……。』


「……?」



シーーーン…



どうしようと私を見た



……なにが?



「え?沖田君とお昼食べる約束したって事…だよね?」


『イェス』


「へー」



よかったねと言う前に、スゴい顔で言った



『どうしたら良いと思うッ!?』


「?…行けば良い、んじゃない?」


『……いや、そうじゃ無くて、』



私の様子を伺う姿にパッと閃いた



「私の事を気にしてくれてるなら、別に平気だよ?」


『それもあるけど…』


「?」




『…一緒なの』


「なにが?」



『お、沖田君と…お弁当の、中身が……。』


「…ほぅ…。」



なる程、つまり同じ中身の…しかも手作りのお弁当を一緒に食べるのが気まずい…ってか、恥ずかしいと


どこの乙女な純情ガールだよまったく…



「別にアンタが作ったんだから変じゃ無いでしょ……あ、」




言った瞬間私の頭に、それはそれは素晴らしいアイデアが浮かんだ


「(ニヤリ…)。」


『…葵?』








「……。」


『……。』


「ささ、食べよっか!」



昼休み、屋上でお弁当を広げて言う



『…何でこうなった』



「沖田君と2人だと緊張したんでしょ?私が居たらまだ和らぐかと思って」


『…葵…!!』



沖田君に聞こえない様にそっと話す

まぁそれもあるけど、単に近くで2人の様子を見たかっただけだけどね



さてと、お弁当を食べますか



「なァ、アンタ誰?」



あからさまに邪魔そうな目で私を見る沖田君

…てか、去年も今年も風紀委員で同じなのに覚えろよ



「いつも一緒にお昼食べてる者ですゥ…ごめんねェ、せっかく2人でお昼の約束してたのに」


「………別に」


『…あ、葵?』


「ん?」


『…な、なんでも無いです!』



そう言って、お弁当を出す


さてと、食べますか…



『……ッ…!』



…と、思ったら中々食べようとしないヘタレが1人
お弁当の蓋を開けようとした所で止まっている



「…?どうしたんでィ?」


「…いや、その…ッ…………あッ!!私飲み物買って来るねッ!!」



「え、ちょっと…」


『じゃ!!』



ピューっともの凄いスピードで出て行ってしまった…



「まじでか…」



「……」



って、私が沖田君と2人っきりになってどうすんの?





「……」


「……」



「………」


「………」




ち、沈黙がツラい…

沖田君と特に話した事なんて無いし…

正直あの子の事どう思ってるのか色々聞きたいけど、さっき悪態とったから私からは話し掛け難いし…




「(どうしよ…私もトイレに逃げよっかな、)」


「…なァ」



いや、でもそしたら戻ってきた時絶対気まずい空気になりそうだしな…

ここは大人しくお昼食べて待って…



「…オイ、聞いてやすかィ」


「…えッ?なに!?」




気付いたら割と近くから沖田君の声がして驚いた

そして彼はもうお弁当を食べ始めている



「なに?」


私も卵焼きに箸を延ばす



「……」


「…なに?」



中々話を切り出さないまま、2つ目の卵焼きが私の胃の中に入った




「…あいつ、俺の事で最近何か言ってやせん?」


「…何かって?」




「……別に」



もう良いと言うように、再びお弁当に手を付け出した



「…あ、そう」



「……。」



「……」


「……」



「………。」




え、なに?

…もしかして沖田君もアレか?
ヘタレ系男子??


気になるけど、でも聞けないみたいな

今更聞くのもアレだけど気になる…から私に聞きたい、けど聞けない


…みたいな?







「…そのお弁当さ、手作りだね」


「…だから何でィ」


「別にィ…ただ昨日の今日で頑張ったんだなーって思っただけ」


「……」



唐揚げとか、サラダとか、入ってる物全部手作りで冷食も見当たらない

彩りも綺麗だし、美味しそう……よし、今度私にも作って貰おう




「色々意味不明な事するけど、ちゃんと頑張って伝えたんだしさ、」


「……」


「…どんなに行動で示しても全部勘違いで終わられちゃうと、私は思うな」



なんせ恋愛に関しては、ヘタレ&ネガティブ部門1位だからね

目の前でそう言う事良く見てたからね、





「…別に何も言って無ェだろ」



「…そーですか、」




せっかく人がそっちの気を汲んであげたのに…
なんて可愛くない奴だ



「…じゃあ私もジュース買って来るから」



それじゃあと言って屋上を出る
…しょうがないからついでに探して来て上げよう




「……なにしてんの?」


『…いや、その……あはは』




扉を開けると目の前に突っ立っているのを見つけた

しかもジュース持ってないし、本当に何やってんだコイツは




「……はぁ、」


『えッ!?…ちょっ…!?』



コッチ側に引っ張って笑顔で一言、ムダに発音良く言ってやった



「じゃッ!fightー!!」


『ちょっ…えェェエ!!?』




バタンッと思いっきり扉を閉める


言いたい事は多少は言ったし、時間も作った

さてさて、どうなるかな…?




「〜〜♪」




2人の事を考えながら鼻歌を歌う



こんなに色々したんだし、いい加減上手く行くと良いけどな…



「……あ、そだ」



結果はどうあれ、戻ったらあの子にベタベタくっ付いてやろう


沖田君がどんな反応するか楽しみ…



「〜〜♪」




そして私はジュースを飲むのであった





*****

7万打ありがとうございます(*´I`*)
そして、やっと復活ですw




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