「…で、そのまま送って貰ったと」


『そーなのです…あ、あと翔樹君が会計の時ちょっとだけ安くしてくれた』


流石葵のお兄ちゃんだけあってする事が男前だ



「そっか、良かったね」

『最近金欠気味だったから助かった』


「…いや、そっちじゃ無くて沖田君の話」


『あ…うん、』



結局あれからずっと変なモヤモヤが治まらない
…けど、それが何なのかも分からない


一体どーしたんだ私は



『あ…!!』

「…ん?どーした」


『教科書忘れた…』


やってしまった…
くっそ…宿題あったけど、まだやってないから今日やろうと思ってたのに

てか先生恐いし普通に怒られる
どーしよ…



「丁度良いじゃん」


『?』


「沖田君に借りれば?」


『え!?いきなり…!?』


そんないきなり物を借りるとか…図々しいとか思われるんじゃ…



「別に問題ないでしょ?友達になったんならさ」

『友達…』


その言葉にまた変にモヤっとする



「…咲夜、」

『?』


「利用出来るもんは、全部利用してでも頑張らないと意味無いよ」


『…うん?』


急に真面目な顔で何を言うかと思ったら、良く分からん事を言われた

利用…?
葵は私に何を利用しろと言うんだ?



「よし、じゃあz組行っておいで!」


『私1人で行く感じなの!?』

「忘れたのはアンタでしょーが」


…それはそうだけど!
いきなり私1人で行くなんて、ちょっとハードルが高いと言うか何と言うか…


「前にz組1人で行った事あるじゃん」

『それは銀ちゃんに頼まれたからって言うか、目的が沖田君じゃ無かったし…てか結局土方君も居たし』


z組が沖田君のクラスだと分かった瞬間からの、私のヘタレ具合はハンパなかったと思う

土方君にも迷惑かけたな…


「行った事には変わりないでしょ、…別に告りに行く訳じゃ無いんだからさァ、適当に行っておいで」


その適当にが私には難しいんだよ!
私からしたら、z組に行く事自体が大いなる決断力が必要なんだよ!


そんな気持ちを込めて葵を見つめる


「早く行かないと時間無くなるよ」


けど、オールスルーされた



『…行って来ます』


教室を出る前にもう1度葵を見てみたけど、早く行けって視線を貰うだけだった








『……ゴクン』


何とかz組にたどり着いた私
前は教室のドアを開けるのに手間取った私だけど、今回はそんな事は無い

…何故なら私が開ける前から前も後ろのドアも開いてるから!


因みに私はあと2、3歩歩けばドアの所に辿り着く所で足が止まっている


次の授業まで、あと10分
それまでに沖田君を呼んで、教科書を借りる作業をしなければだけど、正直出来る気がしない


…でも、10分も此処で固まって周りから変な目で見られる勇気も無いしな
困った…



「何してんでさァ」


『ッ!?』


固まっていた私の背後から、突然声がしてビックリした

しかもその声をよく聞くと、沖田君ではないか



『お、沖田君!』


「ウチのクラスに用かィ?」


ま、まさか教室じゃ無くて後ろから現れるとわ…
完璧に油断してた

…じゃ無くて!
沖田君から話掛けてくれたんだから、早く本題を…



『あ、あの…沖田君…』

「?」


『こ、古典の教科書貸して欲しいんですが…』


「古典?」


『うん…ある?』


「あー…多分、ちょっと待ってなせェ」



そのまま教室に入っていった


…割とスムーズに言えたよ私!
頑張った!

沖田君も別に嫌そうな顔してなかったし…


『…よしッ!』

「お前のそれ口癖か?」

『ッ!』

いきなり後ろから言われて、またまたビックリして振り返ると、そこには土方君がいた



『あ、ども』


「おー、お前総悟と知り合いだったんだな」


『まァ、ね…』


「…へー」



何か探るような視線に、思わず目を反らしてしまった

も、もしかしてバレた…?


「…お前」

「何やってるんでさァ土方さん」


何か言いかけた瞬間に、教科書を持って現れた沖田君


「…ん、」


『あ、ありがとう』



うわうわうわ!!
沖田君から教科書借りちゃったよ!?

次の授業本気で頑張ろう!



「こんな所でナンパですかィ?」

「なっ!?…するわけ無ェだろボケ!!」


『……。』

そんな思いっきり言わなくても…
…違うのは分かり切ってる事だけど、流石にそんな思いっきり否定されると傷付くぞ

…イケメンの言葉は時に凶器だよチクショウ!!


「つか、お前らいつの間にそんな仲良くなったんだよ」


「別に…友達になったからねェ」


『あ、…うん』


同意を求める視線を感じて、それに頷く


「へー」

『……。』


まただ…
嬉しいはずのに、何でか喜べない



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