優しいあの人



「桜井さん、?」

「あ、鉢屋くん昨日はありがと…」

おはよう、と当たり前の如く挨拶をしてくれたイケメン鉢屋くんに私はぎこちなく言葉を返す。ああ、まさか昨日鉢屋くんと一緒に帰ってる所が見られていたなんて。いやストーカーが見てるかもしれないから一緒に帰ろうという話になったんだし仕様がない。男の人と一緒に居る所を見せたら諦めるんじゃないかと思っていたがどうやら逆効果だったようだ。

本当、こんな私の何処が良いのだろうか?ストーカーさんは一体私のどこに惚れたと言うのだろうか?
何度繰り返し考えてみても何も分からない。それどころか謎は深まっていく。

「顔色、本当に悪いよ?もしかしてストーカーの件で何かあった?」

鉢屋くんは周りのクラスメイトに気を使ってくれたのか、私の耳元で小さく囁く。イケメンボイスが擽ったい。え、大丈夫?これ私鉢屋くんファンに殺されたりしない?

「あー、大丈夫?だよ???」

「桜井さん嘘下手だよね。」

ふっ、と小さく笑う鉢屋くんに思わず顔が熱くなった。どうやら鉢屋くんはこの厄介事に首を突っ込む気満々らしい。少し照れたような表情をしたあと直ぐにキリッと真面目な顔になった。


「桜井さんが、心配なんだ。
迷惑でなければ私も関わらせて欲しいな、って…嫌かもしれないけど、
か、彼氏役ならいつでもするし…!」

「ほ」





惚れてまうやろーー!!!!!!!!







机に全力で頭を打ち付けたくなるのを必死に耐える。いや、今の反則でしょ?!?!かっこよすぎでしょ?!?!なんなの?!?!ねぇ??!!はぁ??????キレるよ??????!

鉢屋くんの心配そうな表情に胸が締め付けられる。どうして彼はこんなに私に優しいのだろう。どうして今までまともに喋った事のないクソブスで地味なクラスメイトを構ってくれるのだろう。

それに…

『私の方が貴方の事を愛している』

この手紙の書き方。私の方が、ってこれってまるで鉢屋くんが私のこと…?

ああ、いや。考えるのは止めよう。
きっと気が動転しているのだ。
ストーカーからの手紙をこうも都合良く
解釈するなんて私も強かだな。

「ありがとう、鉢屋くん」

「っ…うん」

感謝の意を込めて彼の手を握る。
何かあった時はまた昨日みたいに頼らせてもらおう。本当に心強い。

「じゃあ」

もうすぐホームルームが始まるから、と鉢屋くんは自分の席に戻って行った。
早く解決しようねとイケメン過ぎる台詞を残して。


(よし…)


そう言ってくれる鉢屋くんの為にも私のためにも早く解決しなければなるまい。幸い私には取って置きの切り札がある。

(七松先輩…)


発動するしかないな。


____
ドロー!!七松小平太カード!!
善法寺伊作を犠牲に召喚!!

という訳で遅れてしまいました。
ごめんなさい。


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