※捏造というかよく分からない話です。倉持の 視点です。
※御幸の母親が亡くなっている、ということが 前提。
※わりとパッと思いつきのお話なので文章とか 色々ごめんなさい

以上が大丈夫な方のみでお願いいたしますで す。



どこか知らない町で「どこだここ。早く練習行かないと」なんて
思いながらぶらぶら歩いていると黒いスーツを着た
小学校中学年くらいの男の子がふらふらしているのが見えて、
向こうもこちらに気付いたのかとととっと寄っ てきて口を開いた。
「すみません、あの、」
「んあ?どうした?」
チビの相手は不慣れだ。
やんちゃしてた中学の 頃はやっぱり避けられがちだったから。
「えっと、帰り道が分からなくなっちゃって」
ここって、どこなんですか?と目の前の少年は 俺に訊ねてきた。
いやいや、そんなの俺だって知りたいわ。
つーか交番にでも行けよ。そうは思うけど口に出せるはずもなく。
「んー、えーと……俺も分かんねえんだよな、
そ の、客みてえなもんだからさ」
「えっ。あ、あ、っと」
あー、結局困らせるようなこと言っちまったか な……。
本当に苦手なんだってのに。
「とりあえず交番とか探してみっか」
戸惑う少年にそう言って、
少しだけ顔が明るくなった彼の手を弱くつないで歩き出した。


「……無ェな」
わりかし歩いたはずなのだけど、
道を気軽に訊ねにいけるようなものはない。
それどころか人だっていない。
(つーか、さっきまでこんなだったか……?)
頭をがしがしと掻いて思う。
町はオレンジから藍色のカーテンが下りる頃。
そういえば、隣のこいつはなんで迷ってるん だっけ?
「おい、なんでお前道に迷っちまったんだよ。
来たんだから分かるはずだろ?ってか何しに来たんだ」
唐突にずらりと並べてしまったからか、
ほんの少し少年の手がびくついた。またやっちまった。
少しの沈黙を置いて、長く伸びた影法師に
目を落としながら彼が口を開いた。
「お母さんのお花あげに来たんだ」
ああ、と黒スーツに合点がいった。
こいつの母さんは死んじまってて、この格好は喪服なわけで。
こんな年で母さんを亡くして気の毒なことだな んて思ったけど、
父親がいない自分もそんなに変わらないもん だ。
「で、来た道を戻ろうとしたら無くなってたん だ」
「んなアホなことあっかよ!迷っただけなん じゃねえの?」
ヒャハハ、と亮さんにうるさいと言われる
いつもの笑い方で笑って返す。
いやいや、本当にそんなことはないだろうと後 ろを振り向いた。
向いた。
そのまま動かない俺を不思議がる隣の奴も
同じように振り向こうとしたけど
「やめろ」
と言葉で刺しとめて、そのまま手を引いて歩を さっきより速めた。
背中がぞわぞわする。
夜の帳が落ちると同時に足にくっついた影法師が消えていく。
それと反するように現れるのは。
「おい!目閉じとけ」
「え、なんで……」
「いいから!!!」
そういうのは昔から信じちゃいなかった、
都市伝説とかユーレイとかそういう類のもの。
だから、さっき後ろにいた群像も見間違いだと 思った。
けど、それは次第にゆっくり増えて。
自分たちは気づくとその群像の真っただ中にい た。
昔、母さんと見に行った映画にこんな生き物が いた気がする。
黒くて向こう側が透ける、赤い目が2つに細長 い手、足はない。
そんなバケモノがうようよと徘徊している。
早く逃げないといけない。人間がいていい場所 ではない。
ただ本能がそう告げるているけど、
今まさに自 分たちはその逃げ道を探していたわけで。
「走るぞ。目は瞑ったままでいい、手ェひかれてろ」
彼の手をつよくつよく握って。
バケモノの中をただただ走る。
止まりそうにな る息を必死でつなぐ。
体が分かっていた、もう止まってしまえば
手で 繋がれたこいつが連れていかれると。
だから、離しても止まってもいけなかった。

そんな夢を見た。
それは胸の奥をそっと縋るように掴まれる感覚 ものだった。


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(ああ〜〜眠い……)
4限の現文、夢見が悪いにもほどがある日の午 後は
いつもより頭の回転が遅く、ひどくぼーっとし ていた。
広げたルーズリーフには眠気に負けじとこなし た
申し訳程度の板書が点々と落ちている。
抜けているところは後で後ろのクソメガネに
写させてもらうことにしよう。
ふと、右手をみつめる。
あの夢の中で、あの少年の手を繋ぎ引いた手。 (……子どもにしては、冷たかったな)
子どもってもっと体温高いもんだった気がす る。
沢村みたいにこの年になってもホッカイロな感 じの奴もいるけれど。
それと結局のところ、あいつの名前は分からな かったし
もう顔もうすぼんやりとしか覚えていない。
あ んなに強烈な夢だったのに。
残ったのはあのバケモノの群れと、
この手に未だに残る体温だけ。
(どんな夢だよ本当に……はた迷惑すぎる わ…………)
そう思いながら、ゆっくりと昼下がりの
睡眠回路に潜っていった。


「倉持。おい、起きろって」
「あ゛?」
「起きて即行メンチ切られるとか
理不尽すぎるだろ起こしてやったのに……次移動」
後ろの席の御幸に起こされて、ひとつ伸び。
とりあえず筆箱だけひっつかんで席を立ち、
ロッカーから物理の教科書を引っ張り出して
御幸と3階への階段へ向かう。
「つーか期末近えけど、野村のやつ範囲終わら せんのかな」
「知らねえよんなもん、どうせまたギリギリだ ろ。
あ、御幸あとで現文のノート見せろ」
階段を上りながら2人で駄弁る。
あー、なんつーかこいつといるのが定着しち まったなあと
こういう時になるとつくづく感じて、
1年の時もう少し友達作りにいそしんでおけば
よかったと少し後悔する。
「ものを頼む態度じゃねえよそれ」
「うっせクソメガネ。もみあげ」
「倉持くんはもう少し素直にな」
れ、と隣の言葉が宙に浮いた。
ふらり、と御幸の体は重力に逆らえずに落ち る。
「バッ……!」 ゆるく伸びたその手をとって強く握った。
コンマ秒ぐらいの出来事の中で、またあの夢を 思い出した。
繋いだ御幸の手の温度が、夢の中の少年とまる で一緒で。
フラッシュバックで思い出す彼の顔は、
今から倒れこむこいつを幼くしたような感じで。

嘘、だろ。

途端止まった時が動いたように、
バタバタバ タ!!っと踊り場へ2人倒れる。
幸いにもそんなに高さがあるところまでまだ上 がっておらず、
「いって〜」の一言で事が済んだ。
「馬鹿野郎!!何やってんだよお前!眼鏡割る ぞ!!」
「悪い、ちょっと寝ぼけてたわ」
「っざっけんな!お前が怪我したらどうすんだ よ!
つーかお前も寝てたのかよ!!」
すごい剣幕でかみつくと、
御幸にしては珍しくしょげているようで。
「……あー、もういい。ほら!授業遅れるわ」
手を引っ張って立ち上がらせてから、先に階段 をトントンと上る。
「倉持」
「あ?」
「……なんでもない」

5限目の開始を告げるチャイムが
また時間をゆるく流していく。
この気に食わないクラスメイトの大切な事を、 また一つ知るのはしばらく後の話。




おそまつさまでした

もつれた夢の先で探して

2014/10/19

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