3人で初日の出を見ようと約束したのに三郎は布団の中から出て来なかった。
僕が寒いのを我慢して支度をしているのに、ほら、もう置いて行くよ、と言ってもまだもぞもぞしていた。そのくせ僕が、じゃあはちと行ってくるね、と戸を閉めようとしたら起き上がって半泣きになる。仕方のない奴だ、三郎は。


「外出許可取ってないからなんだか気が引けるな…」

「あはは自分の名前で許可もらったことないくせによく言うよ」

「私の名前はほら、放送禁止用語だから」

「はいはい、変態だもんなお前は」


違うそういう意味じゃ、と反論する声を聞き流しながら、いつの間にか低いとさえ思うようになった学園の塀を一息に飛び越える。そういえば、最近めっきりあの門を通らなくなった。

真っ暗な裏裏山への山道を歩く。予想していたけど雪が凍っていてよく滑る。防寒にも限界がある足の裏はすぐに麻痺して、三郎と繋いでいる指先だけが妙に人間味を帯びていた。
これだから冬は愛おしい。


「おーはちふわー!」

「明けましておめでとう」

「あけおめー」

「ははっなんだよ三郎、鼻声じゃん」


今年もよろしくな!と故郷から現地集合した八左ヱ門は馬から降りて笑った。
白い息をふわっと吐くのが八左ヱ門らしくて、ほんの5日ぐらいしか離れていなかったのになんだか懐かしさが込み上げてきて泣きそうになった。

三郎も同じだったらしくて、あー泣きそう、と不意に小さく呟いた。ああやめて、僕も泣きそう。手をしっかり握って誤魔化した。


「あーみて、空が、」












- ナノ -