求めることを諦めれば少しは前向きになれたに違いない。うそぶく自らを大切にしよう。そうすることでしか生きていけぬのならば、甘んじて。

「前田殿は強くなりたいとは思われぬのか」
「なんで?」
「いや…その、質問しているのは某でござる」
「思わないよ。なんで?」

大きく息をつく。ごろりと横たえた丸い瞳から好奇心が注がれて弱ってしまう。どうすれば彼のように、笑い、楽しみ、生きることができるのだろう。貪るように力を、強さを、武功を求める自らを恥じた。生きていることに寸分も違いはないのに、何故。

「何故、前田殿は生きてゆけるのです」
「おいしいご飯食べて、あったかい布団で寝て、思う存分暴れて、恋してるからかな」
「…最後を除いてそれは某とて同じです」
「そこだよ!」
「は、」

彼はいきなり起き上がる。思い切り顔を近付けられてめまいがした。
甘い匂いが鼻をかすめる。いつか京の土産と佐助が持ち帰ってくれたみたらしだんごの匂いだった。

「だから、最終的には恋したらいいんだよ。そしたら強くなりたいなんて思わなくなるよ」
「そ、某は決して軟弱になりたいわけでは」
「守るんだって思うことがさ、人を強くしてくれるんだ」

俺を見なよ、と微笑んだ瞳は強かった。確かに。少しぐらい、彼のように生きてみたい。底知れぬほどに強く。









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