「神がそなたに何をもたらした」

細い顎。少しだけ顔をしかめて上杉を見る。手を伸ばせばおそらく、咎めきれない罪に身体が支配されてしまうだろう。絶世。上杉はこの世の果てを見つめていた。
わたくしには、と、双眸とは違えた唇はゆるやかに天を敬う。

「らんせをおあたえになられた」

命を摘むてのひらは、もともと神のものだったらしい。なれば、平和が訪れたとき、やはり上杉は死ぬのだろう。意義のがそこにあるのなら、無に還るのは必然のこと。酒で唇を濡らす上杉を眺めて、やはり天の所業は不可解ぞ、と杯を煽る。
自分にとって、月見酒ほど不愉快なものはなかった。隣にいるのが上杉でなければ、とうに床についていよう刻である。

「たいようとておなじ」
「貴様と同じにするでない」
「そなたがのぞむようにふりそそぐことなど、ないでしょう」

てんめいですよ、と上杉は些か強引に、此の手を引き寄せると、とくりとくりと酒を注いだ。触れ合う指先に罪はない。酔うていた。天命か、と鼻で笑った。





うやむまうや









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