溢れ返った心を引きずって走りだす。目の前の道は真っ暗でどっちが正しいのかわからない。何があるのかもわからない。でも、行き着く先は知っている。目的地も分かっている。
ただ隣を一緒に走ってくれる人がいない。失ったわけではない。
置いてきた。



「俺もう走れない」

「何言ってんだよ三之、」

「走れねぇんだよ。足くじーた」


委員長には内緒な、とぜえぜえ言いながら三之助は行き先に背を向ける。方向音痴もいいところだ。馬鹿野郎そっちじゃねぇ!って、作兵衛なら叫ぶんだろう。作兵衛はやさしいから。俺たちのことを自分のことより大事にしてくれるから。
ぶちり、と力任せにクナイで縄を切られた。これで走りだしたら、俺と三之助なんてあっという間に離れてしまう。


「作兵衛のところ!帰るんだろっ!!」

「だから先帰れって。俺だって帰りたいっつの」

「俺がおんぶするから!」

「治ったら帰る」

「なんでだよっ三、」

「左門!!!」

「っ」

「いっっちばん作兵衛に会いたい俺が、俺を、置いてけっつってんだよ!」


三之助に睨まれて、泣きそうになる。睨んでくる三之助はちょっと泣いていた。泣くぐらいなら一緒に帰ればいい。ここはどこかも、あっちかどうかも分からないけど、作兵衛は絶対俺たちを待っているから。
でも三之助は今走ってきた方を向く。足なんか全然痛そうじゃない。そっちから来るのは作兵衛じゃない。


「左門、作兵衛となら迎えに来られるだろ。待ってっから」

「、んのっ馬鹿之助!!作兵衛に怒られろ!」

「ははは」

「お前なんかもう知らねぇ!あと!作兵衛にいっっっっちばん会いたいのは!俺だぁああああ!!馬鹿ぁぁあああ!!!」


溢れ返った心を引きずって走りだす。目の前の道は真っ暗でどっちが正しいのかわからない。何があるのかもわからない。でも、行き着く先は知っている。目的地も分かっている。
ただ隣を一緒に走ってくれる人がいない。失ったわけではない。
この先にいるだけだ。ただいまの先に。





I'll be back












「作兵衛愛されてるね」

「うまく手懐けたなぁ」

「………」

「まぁとりあえず左門止めるか、あっちでもないし」









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