涼を求めて滝を登りきると、澄んだ空に一層近いところに3人はたどり着いた。誰ともなしにその広い景色に声を失う。
たくさんの星の中で竹谷は瞬きをした。眼窩を潤すたくさんの輝きをこぼさないように、そっと、優しく、ひとつでも多く拾えるように、できるだけ長く長く目を開けていた。隣にいる鉢屋も不破も同じものを見ているのだと思うと、竹谷は不思議な心地になった。
星は1つずつしかなくて、それを分け合うことなどできなかった。どれだけたくさんあっても、自分のものにはならないし、誰かのものにもならない。同じものを見ることは、1つを分け合うよりもどこか尊いようで、睦まじいようで、何か苦しかった。誰も、何も言い出そうとしないその空気がまた、血よりも濃い思いを飽和していた。
知らない間に2人より高くなっていた背の分だけ、竹谷は少し2人のことが上から見える。鉢屋はすこし首を斜めにしてまっすぐ星を見ている。不破はすっと伸びた背筋で広く星を見てる。容姿も何も似ていない。
竹谷はばれないように2人を交互に見て、それから思い切り両腕で抱きしめる。
盛夏にやるには漠然としすぎた見栄だった。


「ばっ!暑いべたべたする臭い!!!」

「はは、いきなりどうしたんだよハチ」

「なんか暑かったから!!」

「はいはい夏だな!わかったから暑いって!」


抵抗する2人は白と黒を上手に混ぜて笑う。
同じものを見て違うことを思っている。たくさんの星がそれぞれの目に浮かぶ。幸せもそういうものであればいいと竹谷はなんとなく思う。3等分より3倍がいい。
欲張りだと言われても、愛しいものは等しく愛しい。





愛しさが深くなる前に







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