骨の浮き出た背中をなぞりながら滲んだ朝日を見た。舌打ち。今日の午前中は実習だ。何だってこんな時間になるまでこいつと同じ空気の中にいるんだか。あくびで生理的に目に張った涙を拭う。吸った空気はどろどろだった。

相性が良すぎるのが駄目だったのだろうと思う。一番最初は殆ど強姦まがいの行為だった。もちろん殴ったし蹴った。そのときにこの縁も、こいつに関しての記憶も、何もかも終わっていればよかったのに。


「くすぐったいです」

「黙れよ」

「お前ほんと事後めんどくさいな。ヤってるときだけじゃん素直なの」

「わかった。死ね」

「ちょ、ちょ、今日は上だったのになんで?なんなんですかこの機嫌の悪さ!」


薄い腹上に乗っかって首に手をかけてやれば、身体は怠いのだろう、力の抜けた指先が手首を掴んでくる。胸焼けしそうな笑みを浮かべる口元が、へいすけ、と呼ぶ。細い骨と管でつなぎ止められているこの首が憎い。この先についている頭蓋が、憎い。


「鉢屋の全部が腹立つんだけど、俺の顔になってんのが一番気に食わない」

「いまさら顔に執着すんの、兵助」

「自分で自分に欲情してるって考えたら吐きそうになる」

「吐くなよ、ここでは吐くなよ」

「吐けないよ」


何度身体を重ねただろう。そろそろ回数もわからないほどに日常化しつつある。指先を滑らせて鉢屋の顎を包むようにして上に向かせる。親指の腹で唇をなぞれば、舌先に舐められた。
柔らかい感触に、だめだと分かっているのに親指でその咥内に踏み込む。歯列をなぞって、生温さを保つ唾液を荒らす。良くなるのを求める俺の目が4つ。この指を抜いたら、また欲情してしまうとお互い分かっている。


「もう空気も身体の中もどろっどろだから、吐くに吐けないし」


くちゅり、と指先が糸を引いたら、ほら、もうだめだ。





水面がみえない









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