ダダダダダ、と気持ち悪いくらいのスピードで腕がボタンに伸びる。奏でる音に欠けたところはなくて、俺はただ呆然と凄まじいボタンの連打音と聞き取れない壮大なBGMを見ていた。
画面ではくるくる回るかわいらしいお姫様とその兄弟と思しき少年がいる。その2人の間には9つのぷよぷよ的何かが0.1秒を競いながら無数に降り注いでいる。じゃんじゃん降ってくるそいつらが下に引かれたとある線の上に差し掛かった瞬間を、勘は絶対に逃さない。叩き割る。


「あーはい残念、15バッド」

「でもグッドも減っただろー。この曲サビの階段で絶対指つるんだよなぁ」

「1桁への道は遠いな」

「うっさい、おれはあさき派なのー」

「えーゼクトの中2っぽさいいじゃん。あと猫叉は神」

「それは認める猫叉は神」

幻水ktkr!とイントロ直後に喉を鳴らして叫んだ三郎から一歩離れた。
世間ではこういうのを『引く』って言う。


「あ、はちー!ごめ、500円ない?」

「へ?1000円札なら…」

「やった!貸して!あと唯ちゃんでコンプリなんだ!」

「ちょっ雷蔵!俺の分の澪ちゃんまだなんだけど!」

「兵助にはさっきインデックスのついでに取れた美琴ちゃんあげただろ。取って欲しいなら資本金稼いで来なよ」

「あ?三郎にはねだられたらデカニョロニョロいっぱい取るくせに」

「三郎は晩ご飯作ってくれるからいいんだよ。兵助はただのドロドロコーヒーメーカーじゃない」

「勘ちゃんはおいしいって言ってくれるからいいのだぁ」


のだぁ、なんて言いながら兵助はちゃっかりカバンにフィギュアたちをしまって、財布を持ってスロットコーナーに歩いて行った。一儲けするつもりらしい。
お前らその音感とか動体視力とか頭の回転をもっと芸術文化とかスポーツとか社会貢献とかに使えばいいのにとこの中で1番、偏差値の低い俺が思う。
世間ではこういうのを『才能の無駄遣い』って言うらしい。







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