手紙は読まれる前に破かれた。
所詮、兵助のことだから、で片付けてしまいたいところだったが、あいにく、手紙を送った張本人さんが目の前にいるわけで、だから私はあまりの罪悪感から、お前何してんだよ、と言わざるを得なかった。なんで兵助が感じるべき罪悪感を私が代わりに感じないといけないのか。神様、もうちょい真面目に人類作ってくださってたら嬉しかったかもしれません。

「ごめん、好きな人いるから」
「だからってお前」
「そいつのためだったら俺は君にもっとひどいことだってできる。そいつが言うなら君とだって俺は付き合うし、キスもするし、セックスだって」
「謝れよ兵助、泣いてんだろ」
「だから、ごめん」

可哀相に、当然、顔を真っ赤にして涙をぼろぼろこぼした後輩の女の子は、細い肩を揺らして、ごめんなさいっと頭を下げて走っていってしまった。心底呆れた。女の子に呼び出されたところにこうして部外者を連れてくるところも踏まえて、こいつはただの下衆でしかない。ああやって、すきです、の一言をぎゅっと凝縮してぶつけてくるならまだ可愛げもあっただろうに。

「三郎、ホテル行こう」
「本当にお前、デリカシーどこに忘れてきたんだよ」
「新宿ら辺」
「あっそ。一生見つからなさそうだな」
「俺は代わりに三郎を見つけたから別にいいんだけど」

手を引かれて油断した隙に、鼻先に至って真面目そうにキスされた。









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