滑り台の上にうんこ座りして先輩は、よーう、早かったな次屋!と午前1時ちょっと前の公園で手を挙げて笑った。街頭でぼんやりと顔の周りが白くなる。先輩きっと息あったかいんだろうなー、と思いながら返事の代わりにあくびをした。同じくふわっと白くなる。鼻先は冷気で麻痺するくらいには寒くて、踏み出す一歩でほっぺたと耳は裂けそうだ。突然、夜中に電話で30分以内に集合なって言われても、スウェットにボスジャンぐらいしか装備できなかったし、大体何するかわかんなかったし。

「あんたなんなんですか阿呆なんですか」
「はははここに来たお前が言うか」
「おれは阿呆だからいいんです」
「滝はなーあと1時間ぐらいかかるって」
「それくらい分かってますよ」
「だから、本当に寒いのに阿呆だなぁ、次屋は」

言いながら立ち上がった先輩は、そのまま轟音を叩きつけてスチールか何かでできた滑り台をガンガンガンガンガン叩き折る勢いで走ってきた。そのまま、思いっきり、ためらいなく、全力で、激突。
と、見せ掛けて、反射的に硬直した全身は、気付けば薄手のダウンジャケットの腕の中にいた。首に下がったドッグタグが目の下に直撃して痛かったことを除けば、先輩の振る舞いにしてはあまりに非暴力的だったので少し驚いた。それからやっぱりものすごくあったかい。

「ばーか、次屋ばーか」
「鼻水つけますよ」
「そしたら留三郎に怒られるぞー」

借り物かよ、と内心つっこみながら、ぬくぬくと先輩にひっつく。寒空の下、先輩を1時間放っておくより公園で理不尽ごっこしてたほうが、きっとずっとあったかいと思ったから。やっぱりあったかい。





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