ベッドで寝る、という概念がなくなったことに気付いたときにはもう、当たり前のようになんでもかんでも2つずつあった。ただ時計だけは1つしかなくて、唯一揉めたのはそれだけだった。あとは境界線を引くように上手になぞっていくだけで、損失でも分裂でもなく、整理整頓は滞りなく済んだ。
残像のようにその光景が彩る夢の淵から落っこちると、いつのまにかソファどころが床で寝ていた。無意識から覚醒しないままの頭を持ち上げると、からだの骨組がぱきりぱきり、ぎしりぎしりいうので、人間にはやっぱり母親のやわらかさとあたたかさが必要なんだと思った。この300グラムの内蔵の奥で帰巣本能が揺れている。

あいつがいなくなって間もない朝は時計の針がずいぶんうるさい。
よけいにひとりを思い出す。



傷つかない時間とペンの先







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