ぽきり、と兵助が折ったのは今日がその日だという細い棒の菓子だった。絶対に製菓商戦に乗せられているとわかっていても今日がその日だと認識した時点で敗北している。
負け戦は趣味じゃない。ただし、負けるが勝ち、とも言う。

「というわけで私はあえてこのかりっとじゅわっと新食感チョコレート菓子を買ってみましたー」
「あまのじゃく」
「ツンデレと呼んでください」
「意地っ張り」

そう言って指先をチョコレートで汚しながら、またポキリ。肘をついて食べるなと何回言っても兵助は睫毛をつんと上に向けて、首がつかれる、とかのたまう。ので、お前勉強ばっかしてるから、脳みそ重たくなるんだよばーかって軽い気持ちで頭突きをしたら、頭が割れるかと思った事件もあった。

「ていうか持ち手から食う奴初めて見た」
「マジで?鉢屋くんの初めていただきました」
「鳥肌立つからやめてください」
「あざまーす」

もうちょっと、オブラートにつつんで、いやつつむとかつつまないとかいう問題でもなかったけども。
だから絶対、ポキポキ食べてるお菓子にしたって、どうせ世間に乗っかって反対側を差し向けてくる算段なんだろう、と、だから持ち手からなんだろう、と、思いきや兵助はポキポキポキと見る間に全部食べてしまった。
若干拍子抜け。

「ねえ、手ェ汚れた」

したのは、舐めて?とあまい指先を突然口に突っ込まれるまで。



Lick my fingers









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