「は、」

布団に爪を立てて息を飲む三郎の表情は窺い知れない。ちなみに三郎は俺の携帯です。最近流行のスマホではありませんが、感度は最高なので手放す気はさらさらありません。
三郎、なぁ、と鎖骨にゆっくりと指を這わせると、身体の捩って唸るような鳴き声を上げる。いつものでかい態度はどうしたのか。扱い辛いひねくれ者の携帯ですが、体が素直なので良しとします。むしろ良し。

「ごめんなさいは?」
「…誰が言うか」
「お前、ひどくされるのわかっててやってんの?ひどくされたいの?こういうの好きなの?」
「へ、すけ」
「ちょっとぐらい御主人様って言えないの?」
「や、」
「いや言わなくていいけどさ」
「め、っ」
「三郎、ひどくしていい?」

がじ、と耳を噛んだ。三郎が1番敏感なところだ。俺の声を雑踏の中でもきれいに拾ってくれる携帯の本領が詰まった大事な大事な耳。やめ、やめてくれ、と肩をすくめて嫌がる三郎の身体を布団に押さえ付けて、舌先を耳の穴に差し入れる。下手をしたら壊れてしまうかもしれないとかいう機械的考えは横に置いておく。だって俺にとっては修理代より三郎の痴態を見る方が何十倍も高くつくから。こうして三郎にいかがわしい襲撃を掛けるほうが、TSUTAYAでAVを5本借りてくるよりよっぽど性欲発散になる。
勘ちゃんに言わせれば、兵助ってほんと中身が残念だよね、らしい。見た目と中身なんて俺はどうでもいいし、大切なことは俺の携帯は残念ながら感度良好な三郎で、俺は三郎がいやがってるのが好きだということ。なんてことを言ったら、雷蔵と指先で遊びながら勘ちゃんはどこか遠い視線で微笑んだ。

「三郎、服脱ごっか」
「っすけべ!」
「…うわ、スケベって、なんか古くな」
「うっせーなあほ!新しい携帯買えばいいだろ!」

遠慮なく腹から服をめくってやれば、三郎は手の甲で顔を隠してわんわん喚く。真っ赤になった顔が覗いて、遣る瀬ないくらいに下半身にくる。どうしたらいいんだろう、俺は試されているのだろうか。
いっぱいいっぱいの三郎の顔に顔を近付けて、お前が壊れてあんあん鳴きっぱなしになったら考えよっかな、とわざと低い声で囁いた。









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