消えたい気分だった。ちぎるようにざくりと一息で切った髪が足元に散った。その苦無を、ぐ、と首に押し付ける。もちろん八左になんて届かない。自分の首にだ。

「行くな八左ヱ門」

必死だった。

「兵助、」
「行くなら俺は死ぬよ」
「なんでお前が」
「死ぬよ。本気だから」
「やめろよ兵助」

ぐ、と首から血を流してみせると、八左は本当に困ったようだった。まったく馬鹿みたいに不毛な話だ。
落ち着け、と渋々馬から降りて、八左は言うべき言葉を躊躇う。俺が本気だと知って、言うはずだった言葉を持て余した。

「言ってくれ八左。今言おうとした言葉を俺にちょうだい」
「、馬鹿野郎」
「違う。馬鹿はどっちだ、それじゃない」
「うるせぇな!馬鹿!」
「じゃあ早く諦めさせてくれよ!楽にしてくれよ!もうたくさんだ!」

振り絞るように叫んだ。本当は、本当は本当になくしたくない。
お前はどうかわかんないけど、俺はなくしたくないんだよ。

「もう、嘘でもいいからさ、俺のために嘘ついてよ…」

すぐ戻るよ、って、いつもみたいに、笑ってよ。









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