「僕が死んでもこうやって埋めてほしいな」

忍に約束された未来はなくて、雷蔵は夢見るようにそう呟いて笑った。
誰もそれを本気になんてしない。
でも私はそれが雷蔵の本心だとわかった。
きっと傍にいすぎたのだろう。
柔らかな嘘でさえ、最近は手にとるようにわかってしまって少し戸惑う。

「縁起でもねぇこと言いやがって」
「えー演技じゃないよ」
「ばーか。笑ってんな」

泥だらけの顔を上げて八左ヱ門が笑った。
八左ヱ門が庭に小鳥を埋めていた。
小さいまま上手に育たず死んだ小鳥はまだ灰色で、同じように生まれた他の3匹は元気に木の上で親鳥に甘えていた。
その真下で、八左ヱ門が糞も恐れず小さな穴を掘っているのを、縁側から飽きもせず眺めている。
よく冷えた秋の風が隣の雷蔵の膝を抱えさせた。

「ごめん。こうやってやさしく弔われるのなら、死に甲斐があるなぁって思ってさ」
「それじゃあ俺より早く死ななきゃなんねーだろ」
「うん。きっと死ねるよ」
「おいなあどうしたんだよ、雷蔵」

次第に困りはじめた八佐ヱ門は泥だらけの手のまま苦笑して頭をかいた。不器用なりに気を遣っているとみて、笑い飛ばそうとしたのを今度は躊躇ったのが見ていて可笑しかった。

皆、薄々は気付いているのだ。その未来が遠くないことぐらい。もう手が届きそうなことぐらい。
八佐ヱ門の顔を見て、優しい雷蔵は膝に顔を埋めてしまった。小さく小さく、ごめん、とつぶやいたのを聞いたのは、きっと私だけだったろうから、そっと髪を撫でてやる。

「なぁハチ、そのときは私も一緒だから、穴2つよろしく」









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