「鉢屋だ」

御名答。膝を抱えて月を眺める先輩は身をよじって私のために場所を空けてくれた。従順な後輩を演じる必要がなくなって安堵するも、この人の隣に私の大切な人を並べたくはなかったので、端正な顔で面倒な髪のまま、その隣に腰掛ける。そういえば秋だった。重そうな満月にまっすぐ直面して、思わずたじろぐ。

「お月見、ですか」
「うん。狼になれそうだったから」
「ああ、あんたなら、」

なれそうだ。

「鉢屋は」
「はい」
「お前は狼にはなれるのか」

いくらかまどろんだ瞳がこちらを見つめた。その双眸の中にいる私は、ひどく怪訝な顔をしている。私を暴いた無邪気な瞳は、いかなる黒も白に映すのだろう。全能の無知だ。剥がれ落ちる。

「なったところで、あんたは嘘を知らないでしょう」









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