入ってきてほしくない。ここは俺の部屋。俺だけの部屋。あの日以来、同室のあいつは2度とここには来なかった。それ以来ここは俺の部屋。俺だけの部屋。ひとりだけの自由な空間だった。

「だから鉢屋出てけって」
「いーじゃん。減るわけじゃない」
「いや減る減ってる、俺の中のお前に対する好意とか寛大な心とかその他もろもろ」
「え、なに一人になりたいの?中二病?」
「中二病っつか中二だし」

どうでもいいから出てけこの野郎。本を読み漁りながら我が物顔で部屋にのさばる鉢屋の体を蹴る。
お前にはお前の部屋があるだろなんで自室で寝転ばないんだ雷蔵とまた喧嘩でもしたのかだったらさっさと謝ってこいさっさと出ていけそれからそれから。

「あと、もう絶っ対、その顔はすんな」
「あ、よかった兵助反応ないから、もう忘れたのかと思った」
「お前って本当、質悪いな」
「お褒めに預かり光栄です」

にやりと笑って部屋に居座るのは鉢屋であって、決してあの日にいなくなったあいつ、では、ない。でも俺はその顔をどうしても蹴れなかった。






尾浜が出てくる前に書いた。




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