抵抗に伸びた手を、難無く重ね合わせて喉に噛み付いた。一見甘いように見えるがこれは相手を捕捉するために外ならない。 女にもうまく化けるためか、組み敷いた細い体は柔らかい。美しいしなやかさはないが、骨のないような気味悪さが漂っていてそれがぞくぞくした。 「ねぇ先輩、目が怖いんですけど」 「そうか?」 「はい。無邪気というより、いっ!」 「まぁそんなのどうでもいい」 かぷ、と鼻に噛み付くと、空いていた手に顔を拒否される。と、肌のしょっぱい味がしない。なんか変な味。舌がびりびりする。人間の味がしない。あれ?と首を傾げると、鉢屋はとても嫌そうに眉を潜めた。 「白粉、ですよ」 「町の女でもこんな味しない」 「私のは忍のものですから、毒入りです」 「じゃあ甘い白粉ってないの」 「知りませんよ。ていうか毒舐めてよく平気ですね」 「私は甘いほうがいい」 「知りませんってば」 アンタの趣味なんか、と不破の顔で一笑される。 ちなみに言えば私は白い方が好みだったから、やっぱり滝にすればよかったと今更ながら思う。が、まぁたまには鉢屋でもいいや。いや不破か。でも中身は鉢屋だ。しかし目の前には嫌そうに鼻を摩る不破の顔。うーん。 「不破もこんな感じかなぁ」 「…なんなら連れてきましょうか」 「や。長次が怒る」 どうだ私にしては賢明だろう。にこりと笑いかけると、同感です、と鉢屋兼不破が間を置かずににこりと吐き捨てた。 * 七松さんと鉢屋くんは暇なだっただけ。 |