三郎はきれいな夜空から降ってきた。星の寄り添う三日月は鋭い。まるでその先から零れたように三郎はふわりと優しく帰ってきた。

「おかえり」

とん、と爪先で枝を揺らして、ただいま、といつもの余裕を目尻にたっぷり含ませて笑う。

「渡して来たよ」
「ありがとう。ごめんね。僕が行けたらよかったんだけど」
「無理はするな雷蔵。私にできることなら頼んでくれたらいい」
「うん、うん。本当にありがとう」

三郎は口布を解いて枕元に座ると、そっと額に顔を寄せて儀式的に口吻けた。つめたい感触。人肌。ふわりと香る匂いは紛れもなく故郷のもので、思わずぶわりと感情が溢れ返った。
ああひどい。勇気を振り絞ってお願いしたときだって、笑って送り出したときだって、おかえりって迎えた瞬間だって、もちろん今だって、僕は、必死に、我慢、したのに。

「何で、三郎が、泣いちゃうの」

目尻に落ちてきた涙を拭って手を伸ばすと、雷蔵のせいさ、と睫毛に涙をいっぱいためた僕が責任転嫁した。







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