ニュースを見ながら、我ながら女々しいとソファに沈み込む。北北東の風、雨よりも風が強くて沿岸には波浪警報が出ている。この国はよっぽど愛され上手なのか、台風の速度は予報を上回るほど静かな速度で進んでいた。日本たんかわいいよはぁはぁペロペロチュッチュってところか。ふざけんな日本はみんなの嫁だ馬鹿野郎。
まぁ明日には去ってってるんじゃない、と昨日の朝、無責任に言い放った気象予報士は昨晩遅くに駆り出されてしまったらしい。おやすみ、は言ったのでそのあとだ。もぬけの殻の部屋と、昨日はあったはずの傘がないことと、繰り返されるテレビのアナウンスを重ね合わせれば、同棲相手の行動パターンぐらい予測できる。机の上に置かれた紙には敢えて目を向けない。向けたら負けな気がする。

「…水槽裏見学の予約、キャンセルしないと」

ソファの上で膝を抱えながら首を後ろに投げやる。テレビの明るさしかないこんな薄暗い部屋では目蓋を閉じれば今すぐにでもふて寝ができる。
今日は水族館に連れていってくれる約束だったのに、三郎なんて今すぐ氾濫した川に巻き込まれて溺れてしまえばいい。そうしたら俺も川に飛び込んで一緒に海の方まで流されていこう。手をつないで大量の水に太平洋の沖まで連れていってもらったら、きっと水槽よりもたくさんの魚たちに会えるから。









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