吹き抜ける群青がよく似合う波風だった。綿雲が、いち、にい、さん。数えていると、ちりりん、と錫杖が夏空に響いて、ああ桂だ、転がしていた身体を起こす。海に近いこの街で、俺達は育った。

「よォ。昼過ぎって、聞いてたけど」
「…一人か」
「チビ共なら海だぜー。おー何、土産?」
「供え物だ馬鹿者」

ぶら下げた風呂敷を手繰り寄せる。開ければ、しかも花。なんだ、甘味じゃねーの、とせっかく起こした身体をまた畳に捨てた。酢昆布ならあるぞ、と言うのは、真っ先にあの二人を探すくらいだ。桂は昔から世話を焼くのが好きだった。

「というか目を離すな保護者。夏の海はあれだぞ、いろいろ危険だ」
「大丈夫だ、テロリストはここにいる」
「いや、違うぞ俺は。ただの攘夷を志す坊主だ」
「どんな坊主だ。つーか結局危険じゃねーか」
「坊主じゃない桂だ」

わらじを脱ぎながら口にするお決まりの台詞を、へいへい、と聞き流す。桂は無遠慮に縁側から座敷に上がると、笠を外してガランと錫杖と並べた。ぼうっと眺めているうちに、しゅるりと袈裟が外されて、慣れたように物騒な装備を外していく。着膨れしてたのはそれか。薄い鎖帷子や手甲、袖口の匕首や爆弾やエリザベス人形などがばらばら落ちてきて、俺だったら命より暑さ優先してるね、と呆れた。
最後にふわりと髪を流せば、狂乱の貴公子のできあり。

「年取ったなー…」
「だから何だ」
「でもクるもんはクるな」

膝を折ってばらまいたものを片付ける桂が、妙にしおらしかったので、手を引っぱって笑った。









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