三郎は肩に矢を2本ほど刺しておれの部屋にやってきた。自室に帰らなかったのは賢明だ。経験則からだろうけど、あの部屋の不動明王が腹一発で済ませてくれるはずがない。肩より数倍の怪我を負わされて保健室に軟禁されるのがオチだ。


「雷蔵、どうしてた?」

「3日前までは断食してた。2日前からだんだん怒り始めた。今日がたぶんピークだと思う。はっちゃんが疲れてた」

「なるほど私も運がない」

「悪運はあるんじゃない?」


消毒の後、ぎゅ、と包帯をきつく締めた。幸い、矢に毒はなかったし、出血も最低限で済んだようだ。
雷蔵は、そのときのことはよく覚えていないと言っていた。ただ鉢屋も同じく、あまり覚えていない、と言ったから、2人の間に何かがあったことは間違いない。何より忍務の内容で分かれてしまったのなら、雷蔵が大人しく学園でこいつの帰還を待っているはずがなかった。


「はい、ひとまず手当てはしたけど、部屋に帰れないのにどうするんだよ」

「勘ちゃん、私が鉢屋三郎だってこと忘れてるだろ」

「いや覚えてるからむしろ心配してるんだけど」

「こうするんだよ」


ふふんと笑って鉢屋は目の前で衣を翻した。ばさり、と一瞬のうちに不破雷蔵の鉢屋三郎は消え去り、そこにはちょこんと可愛らしい後輩がいた。3年は組、三反田数馬です。と礼儀正しく頭を下げる。


「いやいやいや、無駄でしょ」

「うん私もそう思うよ」


そうこうしているうちにわざとどたどた響かせながら近付いてくる死のカウントダウンに、三反田は不運そうに眉を下げて弱々しく笑った。









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