(※死んでいます)










込み上げた熱を振り払いたくて走った。
熱い痛みはそれでも暴走したように喉を這い上がってついに脳天を突き破った。こんな未来を望んだんじゃない。もう考えたくないぐらい、苦しかった。

「いや、だよ…だめだよ、もうたくさんだ……」

絞るように声をあげると、それはすぐに泣き声になった。唇が震える。頭が真っ白になる。詰まる胸を上下させると、泣き声もそこそこに、やがて音も下手くそな喚き声に変わった。
だんだん息もできなくなる。追われ疲れた足がもつれて、近くの木に体をぶつけてそこですべてを止めた。そのままずるずると倒れこむ。
もうだめだ。ここで死にたい。
そう思った瞬間だった。

「休憩か?」

頭の上から言葉が降ってきて、けれど見上げる気力も泣き止む義理もなかったので、無視してもっと大声を出してやった。
嘘。知った声に縋るように声が溢れかえって止められなくなった。

「相変わらず泣き虫だな。食満が最後まで心配するわけだ」

とん、と優しい風圧で地面に降りたのはかつて友だったで秀才あり、今は相対する城の忍だった。艶やかな流れの黒髪はまっすぐ風に揺られて、滲む視界の端に映った。
思い出に残るそれより少し長くなったように思う。それがまた喉を痛くする原因で、涙は身体中の水分を捨てきるまで止まらないつもりらしかった。

「うぁ、ああああ、ふ、」
「そう怯えるな、親愛なる同胞よ。私はお前を恨んでもいないし憎くもない。むしろ愛しいし、こうして再会できて嬉しいよ」

なぁ、は組の善法寺伊作。と両腕を広げるのは間違いなく完全無欠の立花仙蔵その人で、身体中に食満留三郎の血を纏って、世界で1番柔らかに微笑んだ。

「はは、感謝するぞ。今回はずいぶん楽ができた」

そう言ってくれたのが、お前を許す前で本当によかったと思う。











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