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霧に包まれた廃れた洋館。
門の奥には庭があったが、手入れがされていないのであろう、あれ放題であった。
そしてその館の最上階には最近人が使ったのであろう、蜘蛛の巣や埃等がなく、綺麗に掃除されていた。
そしてベッドには淡いピンクの髪色に、燃え上がるように赤い、紅梅の様な瞳をもつ女…否、少女と言おうか…
両目の下の頬には鍵爪で引っ掻いたような跡がある。
そしてその少女は端正な顔を歪ませ、目を鋭くさせていた。
嫉妬、憎悪、狂気が入り交じったその瞳は、折角の美貌を台無しにしている。
その女は手にある水晶を眺め、醜く口を歪ませた。
その女は本来ならばこの世界に有らざるもの…
「くくく…妾ははやくその体が欲しいぞ…
時空の女神よ…」
やがてその女は手に持っていた水晶を床に落とした。
パリーン――…
女はその水晶に見向きもせず、部屋に置いてあるクローゼットの扉に手をかけた。
「くくく…リング争奪戦か…妾が時空の女神の体を乗っとるのによい余興だ。」
女はレースやフリルがあしらわれたドレスを手に取りながら嘆いた。
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