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「おやぁ、珍しく巫女達の予言があたったんですねぇ。これもまた一興、いやはや、一驚、ですかねぇ。」
メフィストが自身の髭を指で包むようにして撫でる。
「で?ヴァチカンへの報告はどうする?」
藤本がメフィストの出した紅茶を飲みながら言う。
「ああ…そうですねえ、報告は私からしておきます。御神体は私が特別に部屋を用意するのでそこに運んでください。」
「そうか、分かった。」
そっれだけを言うと藤本はさっさと仕事を終わらせるためにか、ティーカップから手を離すと、鍵を使い現場へと戻り、今度は御神体を抱えて帰ってきた。
もちろん御神体を運ぶ際にも封印やらなんやらしなくてはいけないのでそれなりには時間がかかった。
だが、藤本が戻る頃には既に部屋は用意されており、メフィストが当然のように藤本を部屋へと案内した。
「ふうう…しっかし、御神体ってなんなんだァ?ちょうど人位の大きさだが…なかに死体が入ってるわけじゃないよな…?」
「まぁ、その可能性も否めませんでしょう。なにやら膜が張っているようですし…」
そ、っと。
メフィストがその膜に触れる。
すると膜はそれを拒絶するかの様に鈍く光った。
「…おっと、」
メフィストは手を離す。
「流石御神体というだけありますねえ、悪魔の私は触れられたくないらしい。」
メフィストは関心したように、嘲笑の笑みとも取れるように笑った。
「…ふん、お前の本性見抜いたんじゃないか?」
にゃはは、藤本がメフィストをおちょくるように笑う。
「…ふん!」
メフィストは気に入らない、とでも言うように鼻を鳴らした。
「そう怒るなって!そもそも御神体とか呼ばれたものに悪魔のお前がそう易易触れられる訳ないだろ?」
藤本はメフィスト機嫌が悪くなりそうなのでフォローを入れた。メフィストの場合は期限が悪いと無理難題を押しつけ、それに四苦八苦する人間を見て楽しむ…
そんな経験上、藤本はメフィストの友人と呼ばれる訳で――――嫌というほど味わっていた。
「藤本にフォローされるとは…不覚。」
「おいちょっと待て。お前俺をなんだと…」
思っている。
その言葉が続くことはなかった。
唐突に、御神体全体が光り出した。
「!!これは…」
「膜が、破ける…!!」
閃光、刹那膜は脆くも弾けた。
「!!!子供…?」
「この少女は…まさか…!!」
藤本は目を見開き、少女を凝視した。
メフィストは歓喜した。
まさか再びこの少女と相見えることができるとは。
(ああ、全く…楽しいショーの始りですかねぇ…?
姫巫女様…?)
メフィストは黒髪で静かに目を伏せる少女を怪しい笑で見つめる。
その視線の意味はなにか。
ただ分かることは、それが姫巫女と呼ばれる少女にとって、いいことではないのが確かだ。