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こぽり、こぽり…



水の中から空気の漏れる音が聞こえる。


《主様―

どうか、貴方様の築いたこの国を、お守りください―》


そういったのは、白い矮躯の狐。


立派な尾は、九つある。


《我が眷属が使えし巫女、及に貴方様の弟様の子孫が…いまや危機に晒されようとしております。

どうか…目を、お覚ましください…


――――――様…》




立派な九尾が、黒髪の少女に言葉をかける。



黒髪の少女は白に赤き衣を身に纏っており、頭には冠、首には勾玉の首飾り、手には八角の鏡が納められている。



そう彼女こそが倭国の王、姫巫女である。



嫋やかな黒髪は水にゆらゆらと揺れている。


黄色と紫の瞳は固く閉じられ、長いまつげに隠れている。



こぽり



この海底に、一つの光が差し込んだようだった。







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