ドキッ「えっ!??」





さすが女王のロイヤルガードなだけあって、鋭い洞察力の持ち主だ。









「ヘンって…どこが?」



『うーーん。なーんかボクに対してよそよそしいっていうか…

もしかして君、なんか隠してる?』





名前はヒヤヒヤする気持ちを押さえ、声を絞りだすように答える。







「何も隠してないわよ」






『そう。てっきり名前が、浮気でもしたのかと思っちゃった』









浮気してるのは自分の方じゃないの?と思う反面 的外れな質問に気付かれていないと分かり、内心ホッとした。






『じゃ、そろそろ行ってくるよ』


「ん…行ってらっしゃい」










燕尾服に着替え、早朝から仕事に向かう夫は、働かないことを誇りにする中流階級よりも立派に思えた。












(やっぱり、疑うのはよそう)








コンコン






そう思っていると扉の向こうから、ノックの音と共にメイド長の声がする。






「奥様、報告がありますのでよろしいですか?」






“奥様”


使用人たちからそう呼ばれることに当初はむず痒く思っていたが、最近ではようやく慣れていた。






「えぇ、入って」


「失礼します。


先日 メイドが旦那様の衣裳を洗濯していたところ、ポケットにコレが入っておりましたので奥様に御報告を」







絹のハンカチに包(くる)まれて、メイドに手渡されたキラリと光るそれは、




「金の…指輪?」









指輪の大きさやデザインからしておそらく男性用だった。










(…チャールズのかな?)







いや…彼のなら、サイズがもっと小さい筈。






それに、結婚指輪でさえ普段からはめない彼が指輪なんて持ち歩く筈がない。







そう思い、指輪の内側に薄く掘られた文字を見た瞬間





名前の背筋に言いようのない恐怖が押し寄せた。








「……洗濯した衣裳というのはどの服なの?」






名前の問いにメイドは考えるように答えた。






「え…と、確か、旦那様がオックスフォード伯爵主催の夜会に行った時の衣裳です。」












「そう………」









名前はメイドの方も見ずに力なく呟くと、無言で指輪をじっと見つめていた。



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