フローリスのホワイトローズには、ベルガモットという果物の香りが含まれている。
ベルガモットはアールグレイの中に含まれている果物でもある。
どういう意図で男爵夫人がこの香水をつけているのかは知らないが、
私は彼女の秘めた愛を垣間見た気がした。
***
『キミ、最近太ったんじゃない?』
朝、チャールズの大きなベッドの中で目覚めのキスと共にそう告げられた。
「そ…そう?」
そう言われてみれば、確かに最近はよくお腹が空くし、コルセットも中々締まらない。
「…ダイエットでもしようかな」
『じゃ乗馬でもしてみたら?』
「えっ、でも…」
『へーきへーき。陛下が大の乗馬好きだからさ、もしかしたら宮殿内の厩舎の馬 貸してくれるかも』
ふわりと笑う彼に、私は引きつった愛想笑いしかできないでいた。
オールコック夫人の言葉に根拠はないけれど、チャールズを全く疑ってないと言ったら嘘になる。
もし、本当にサラの夫を殺したのがチャールズだったら…
…私はどうすればいいのだろう?
そんな想いが頭を駆け巡って、
いつも通りチャールズに接しようと思っても、あの日以来明らかに彼によそよそしい態度を取ってしまう自分がいた。
『……なーんか
最近名前、変じゃない?』
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