頭の中で何かがガラガラと崩れ落ちた。
目の前が真っ暗になって、世界が一瞬停止した。
「ウソ……
嘘よ、そんなの……」
近くの烏が羽撃くのと同時に、やっと出た消え入りそうな声で男爵夫人に反論する。
しかしそれも虚しく、悪戯を企む子供のような笑みを浮かべた男爵夫人によってあっさりと否定される。
「嘘じゃないわ。知らないの?人を殺したあとの彼って、スッゴク機嫌が悪くなって女を抱くの」
男爵夫人は妖艶な声でそう囁いた。
こんな人の言うことなんか信じない。
私は愛してる人の方を信じる。
だけど、思い当たる節はあった。
チャールズが犯すように抱いてくることは今までに何度かあった。
もし……それが、人を殺めた後だとしたら?
死体の上で佇むチャールズの夢。
血をつけて、なんでもないと言ったオックスフォード邸での夜。
泣き暮れるサラ……
それらの光景が頭の中で混沌とフラッシュバックしていた。
「悲しみを花葬」
続く??
← →
ページ数[3/3]
総数[51/80]