『もう、君とは会わない』
そう言われた瞬間、
私のすべてが終わった気がした。
グレイの言葉が嘘だと思いたくて、ちょっとだけ強がって平静を装う。
「あら……どうしたの?奥さんが出来てから随分と真面目になったじゃない」
言ったあとに後悔した。
グレイは今までに見たことないくらいに優しい顔をしていた。
『ボクは変わったんだよ。オンナ遊びはもう卒業』
(パリンッ)
その瞬間、手にしていたティーポットが床の上で粉々になった。
「イヤよっ!どうしちゃったのよ、グレイ?前の貴方はそんなんじゃなかった」
グレイと初めて出会ったのは数年前の夜会。
一目見て格好良いなぁ……なんて思ってたら声をかけられて、その日のうちに純潔を奪われた。
最初は私だけ特別なのかと思ったけど、グレイに遊ばれた私みたいな女は山ほどいることを後から知った。
そのうち、私は親に決められた人と結婚したけどグレイとの関係を続けていた。
それなのに、
自分が結婚した途端 もう会わないなんて……
そんなの勝手すぎる……!
「……エルザ、あんたにも旦那がいるじゃん」
グレイは優しく、宥めるように私に諭す。
「嫌……!アレは親が勝手に決めたことよ!?
お願いグレイ、体だけでもいいから……傍にいさせて」
そう言って胸元に泣き付けば、彼は 私の肩に手を添える。
(あぁ……やっぱり彼は戻ってきた)
そう思ったのも束の間。
グレイは天使のように美しい顔で悪魔のような言葉を囁いた。
『じゃあ、くわえてよ』
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