「当家へようこそ、グレイ伯爵(アール・オブ・グレイ)。……そして、グレイ伯爵夫人(カウンテス・オブ・グレイ)







広間に入るとミッドフォード侯爵夫人が暖かく出迎えてくれた。









『結婚式以来ですねミッドフォード侯爵夫人。本日はお招き感謝します』









場慣れしているチャールズも流暢に挨拶を交わす。


あんなに行くのを嫌がったのが嘘のようだ。













「今日は思う存分楽しんでくれ。私は他の客のもてなしがあるので失礼する」














そう告げると夫人は早々とこの場を後にした。










フリルやレースで飾られた広間はミッドフォード侯爵の趣味だろうか……?







曲に合わせて色とりどりのドレスを翻して踊る貴婦人たちはなんとも美しかった。






「綺麗……チャールズは踊らないの?」









うっとりしながら夫に尋ねると、彼は早速ご馳走を頬張っていた。











『ボクはいいー。踊りたいなら君だけ行って来なよ』











それだけ言うとまたご馳走に手を伸ばした。











そんな姿を見て思わずため息をこぼす。








(我が夫ながら恥ずかしい……)





舞踏会に来て踊らないのなら、一体何の為にきたのだろう。









大食漢な夫に呆れて、一人寂しく周りのダンスを眺めていると……







「名前!?あなた名前じゃない!」





突然、名前を呼ばれ振り返るとそこにいたのは……







「サラ!?サラじゃない!久しぶり!」









目の前の金髪美女サラ・バートンは故郷の幼なじみ。

(今は、結婚してスチュアート公爵夫人になったらしいが)



私たちは久しぶりの再会に感激して思わず世間話に花を咲かせた。











「それにしてもサラ、公爵夫人なんて大出世ね」








公爵の位は王室の親類を意味する。


同じ下級貴族だったサラにとってこの結婚はとても名誉なことだ。







「あら、それを言うなら名前だってあの名門グレイ家に嫁いだんでしょ?」


「え、えぇ……まぁ、そうだけど……」







サラは目を細めて怪しく笑う。





「で?どうなの、グレイ伯爵は」





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