ボスッ







「グ……レイ伯爵?」










気付けば天井を仰ぐ態勢になっていた。

目の前には、グレイ伯爵の端整な顔。








私はグレイ伯爵に押し倒されていた。

彼のお風呂上がりで濡れた長い髪が私の頬にあたる。










『ホントはボクだってこんなことしたくないんだけどさ……

君も伯爵夫人として最初の仕事でしょ?』






グレイ伯爵は妖艶に笑って言った。











貴族の妻は次の後継ぎを生むためだけに存在する。


元気な男の子を産み、立派な後継ぎとして育てることが女の務め。







それができない妻はいらない。







そうならない為にも、私はこの人の男の子を孕まなければならない。








初夜はそのための夫婦の最初の儀式なのだ。













考える暇もないうちに、私はグレイ伯爵に口付けされていた。







「んッ……!」







昼間の結婚式の時とは違う。


深く激しいキス……









グレイ伯爵と私の重みでベッドが軋む音がする。













何度も角度を変え、それに飽きると、今度は無理矢理 唇を抉じ開けられ彼の舌が入ってきた。









「?!


……い……ヤッ!!!」












私は耐えきれなくなり、グレイ伯爵を押し退けてしまった。








『……何?』








彼は眉をよせて少し不機嫌そうに言った。






「……怖、い……」









荒い息遣いの中で、私はこれまで堪えていたものが溢れ出すように泣きだしてしまった。










グレイ伯爵は私を見て深く息を吐き出すと、私の頭を自分の胸の中にうずめた。







『あー……ごめんって。ちょっとからかい過ぎちゃったよ』






そう言ってグレイ伯爵は小さい子をあやすように私の背中をなでた。








『もうしないからさ……


寝よ。ボク眠くなっちゃった』











珍しくバツが悪そうに言うグレイ伯爵は、人に優しくすることに慣れていないみたいだ。





グレイ伯爵は私を胸に収めたまま眠りについた。












私はグレイ伯爵の胸の中で、彼の匂いと不器用な優しさに包まれたまま眠ってしまった。

















「優しい初夜」
続く??



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