ドクドクドクドク、
心臓の鳴る音がする。
グレイ伯爵の部屋は一台の燭台にしか明かりがついておらず、そのせいで部屋は真っ暗だった。
私はグレイ伯爵の大きなベッドに座り、この真っ暗な部屋で湯浴みに行った彼を待っていた。
(ガチャ)
『お風呂が長くなっちゃった。ごめんネ待った?』
「いッ……いえ!大丈夫です」
グレイ伯爵はクスッと笑うと隣に座って、私の顔を覗き込んだ。
『もしかして、緊張してる?』
「……ッ!」
そう言う彼の唇は弧を描いていて、戸惑う私を明らかにからかっていた。
← →
ページ数[1/2]
総数[9/80]