「あっ、私……」
「グレイ伯爵、こちらは貴方の許婚の名前様です」
突然の出来事に驚いて口籠もっていると、いつのまにか先ほどの御者の人がいてグレイ伯爵に私の説明をした。
彼の説明に合わせ、慌てて自己紹介をした。
「は、はじめまして!私は……」
『ハァ!?許婚ってこんなガキなワケ?』
………………え?
『しかも、こんな田舎者と……。大体 こんな時期に結婚なんて先先代も何考えてんだろーね?』
何……この人。
(こんな人なんて聞いてない!!)
横柄な態度の彼に我慢できなくなって、つい声を荒げてしまった。
「……貴方さっきから、言いたい放題ですけどねぇ!?
私だってしたくて結婚するわけじゃないんです!!勝手に親に決められてたことなんです!」
言った。
言ってしまった。
名門貴族の伯爵に向かって大きな声で怒鳴ってしまった……。
しかし、私の心情とは裏腹にグレイ伯爵は至って冷静に答えた。
『それはボクだって同じ。ボクだってケッコンなんかヤだよ。
だけど、式は明後日に控えてるし。これはもう決められたことだから今更、破棄はできないよ』
「そんな……」
グレイ伯爵は眠そうに欠伸をすると、座っていたイスから立ち上がって言った。
『仕方ないけどあきらめて結婚するしかないんだよ、ボク達は』
どーでもいい。
そんな感じだった。
彼にとって結婚とは単なる仕事の一部のようだ。
……それが、私と彼の初対面で最初の印象だった。
***
「……というワケで本題に戻りまして、確認の為もう一度尋ねますわ。レディ・名前
貴女は処女ですか?それとも……」
「きゃぁぁぁぁ!!!
しょ…処女です処女です!だいたい、許婚がいるのに経験者なワケないじゃないですかっ!」
あぁ……
私は何、大きな声で恥ずかしいこと言ってんだろ……
「それでは当初の予定通り、白いウェディングドレスの着用が可能ですわね」
ニナさんはニッコリ微笑むと紙に何かを書いて部屋を出ていった。
ニナさんがいなくなった後、大きな部屋に一人ポツンと残される。
「はぁ……疲れた」
窓から空を見上げて憂鬱な気分になった。
最悪な結婚式まで、
あと一日だ。
「White marry」
続く??
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