その白いタキシードはグレイ伯爵の白い髪ととてもよくマッチしていて、ニナさんのセンスの良さを物語っていた。
「グレイ伯爵!
いくら、これから妻になる方と言えどレディの試着中に入室するとは……」
『まァまァ、固いこと言わなくていいじゃん』
グレイ伯爵はニナさんの注意を軽く流すと、まだ仮のウェディングドレスに身を包んだ私を見てニヤリと笑った。
『ヘェ〜
馬子にも衣裳だね。少しは見られるようになったんじゃない?』
(ムカッ)
「私をからかいに来たんですか?グレイ伯爵」
グレイ伯爵の挑発を理性でこらえ、この嫌みたらしい男をキッと睨んだ。
『べっつに〜?
君の用意が遅いから様子を見にきただけ。ただ……』
グレイ伯爵は頭をポリポリ掻きながら、扉のほうに歩いていく。
『ボクの花嫁として、恥ずかしくないようにしといてよね。
恥をかくのは、ボクなんだから』
それだけ言うと彼は部屋を出ていった。
「……」
…ムッかつく!
(ガタン!)
腹立たしさを抑えきれず、傍にあったダストボックスを思いっきり蹴飛ばした。
淑女としてはかなりはしたない行為だけど、今はそれどころじゃない。
あぁ……なんでこんな事になっちゃったんだろう……。
(父様と母様がそうだったように、結婚ってもっと幸せなものだと思ってたのに……)
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