「ちょっと前まで元気がないように見えたからな。私たちも心配していたんだ」
夫人の言葉に、横に座るエリザベスも大きく頷き同意した。
「それは……」
オールコック男爵夫人のことや、チャールズの仕事のこともあり確かに塞ぎ込んでいた時期があった。
恐らく侯爵夫人は事情は知らずとも、そのときのことを言っているのだろう。
「初めての出産で不安なことも沢山あると思うが、なにかあったら頼ってくれ。出来る限り力になろう」
「!」
社交辞令などではない、侯爵夫人の温かい言葉に名前の胸は熱くなった。
この人は厳しいようにみえて、とても母性と優しさに溢れた女性だ。
侯爵夫人がいるからこそミッドフォード家は明るく、愛に満ち溢れているのだ。
「ありがとう、ございます……!」
私もこんな風になりたい。
侯爵夫人のような強い母に。ミッドフォード家のような温かい家庭を築きたい。
願わくば、愛する人と……。
「色々と心配をおかけして申し訳ありません。でも私はもう大丈夫です」
まだ膨らみの目立たない自身のお腹に愛おしそうに手を置いて、名前は優しく微笑んでみせた。
「私はもう、ひとりじゃないから」
「与えられた幸せの中で」
続く??
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