馬車が進む度、どんどん小さくなっていく生まれ育った家
…――バッキンガム宮殿。
何度半生を振り返ってみても、思い出の中には必ずグレイがいた。
「グレイ……逢いにきてよ」
嗚呼、どうして。こんなに好きなのに結ばれることは叶わないのですか。
御者に聞かれないように、誰もいない馬車の中で声を押し殺して泣いた。
結婚式で花嫁が涙目でも誰も不思議に思わないだろうから……
ガタンッッッ!!!
突然、馬車が止まったかと思うと、馬の雄叫びと共に馬車は大きく揺れた。
「な、何……っ!?」
突然の出来事に戸惑っていると、一本のレイピアが馬車を突き破って扉はバラバラに解体された。
『やっと、見つけた』
扉を壊した張本人は不粋にも馬車の中に入ってくると、花嫁を見据えるなりそう言った。
彼女は言葉を失った。← → ページ数[2/4]
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