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『やっと寝たよ、このオバさん…』
グレイはさっきまで繋がっていた裸で眠りについた女の横で一言、呟いた。
この女はフランスからの密偵で英国王室のことをかぎ回っていたが、ちょっと甘い言葉で誘ってやったら すぐに堕ちてくれた。
『じゃなきゃ、誰がこーんな年増女と…』
”すべては女王陛下の御心のままに―――…”
そんなフィップスの台詞が聞こえてきそうだ。
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服装を整え、執務室から出ると回廊の端っこで名前が茫然と立っていた。
『何やってんの?こんなトコロで』
何気なくそう尋ねると、彼女は目も合わせないで答えた。
「別に…。それよりフィップスが探してたわよ」
低い声色で答える名前に違和感を覚える。
いつもなら顔を合わせるだけで、アレしたいコレしたいだの我儘ばっかなのに。
『…なんかあったの?』
そう言って肩に触れると、彼女はビクンと肩を震わせてボクの左手を汚いものでも振り落とすかのように払い除けた。
その場にパシッと乾いた音が響いた。
「わたしに…触らないで」
彼女は見たこともない目でボクを睨むと、その場を走り去っていった。
突然の出来事にワケがわからずその場で一人、取り残される。
『女ってホーント、わけわかんない…』
だけど、彼女が泣いているように見えたのは気のせいだろうか。
「伯爵と我儘姫-上-」
続く??
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実際のヴィクトリア女王の末娘は女王秘書だったそうです。
もしかしたらグレイと同僚だったかも。
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