***












「やぁやぁ、グレイ伯爵」









白薔薇が咲き乱れるグレイ伯爵家の所有する田舎屋敷(マナーハウス)に、ひとりの男が足を運ぶ。










「名前の夫のアーチー・グレザーと申します。妻がいつもお世話になっております」



『お会いするのは初めてですね、グレザー子爵。この度は突然お呼びたてして申し訳ありません』













グレザーは人目を気にするように、初めて訪れるグレイ家の屋敷内をキョロキョロと見渡す。














「いえいえ。ところで内密の話とは一体…?もしや名前が粗相をしでかしたとか」




『いえいえ。まァ、お掛けになってください』












グレイが愛想のいい笑顔で答えると、彼は一先ずホッとしたようでソファに腰を落とした。











メイドに用意させた紅茶の中に角砂糖をボチャボチャと投入する伯爵の様子を眺めながら、グレザーは口火を切った。












「我が妻はどうですかな?グレイ伯爵」














その一言でグレイはピクリと動きを止める。













「しかし、グレイ伯爵もモノ好きですなぁ。あのような愚鈍な商売女をお気に召すなんて……」



『愚鈍?』




「えぇ。私も騙されたクチですが、家内は独身の頃イーストエンドで娼婦をしていたらしく……。きっと碌な理由じゃなかったんでしょうが、身を売って金を稼ぐなんて頭のヨワイ女に決まって、」











(ドスン)













「……え?」











あまりにも一瞬の出来事で、グレザーには何が起こったのかわからなかった。







ヒュッと金属が風を切り、鈍い音がしたかと思った後、数秒遅れて自身の胸部に激痛が走った。


















グレイのレイピアの刃がグレザーの心臓を貫通していたのだ。











「あ…が…ッ?!」




『汚い声で名前の名前を口にするの、やめてくれる?耳障りなんだよね』










グレザーは何が起きたか分からないといった表情で、グレイの顔を見ると、彼は先程までの愛想笑いをやめ、ヒューヒューと虫の息のグレザーを見下ろしていた。












『じゃあね。グレザー”子爵”』










グレイがレイピアの柄をググッと握ると、グレザーはクッタリと息絶えた。
















(これで邪魔者はいなくなった)














死んだことを確認するため、グレイは先程まで談笑していた男の器を思い切り踏み付ける。






その顔は蒼ざめて、白目をむいており見る影もなかった。















(こんな汚くて低俗な男に名前は苦しめられていたんだ)












そう思うと亡骸を踏む足の力に憎しみが込められた。













『だけど、それも今日でお終い』














ーーあとは彼女を手に入れるだけ。














「Only my prostitute」
続く??



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